アニメ『キルラキル』の原型はあの「漫画」!? 中島かずきの語る「思い出の漫画」

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公開日:2018/3/1

『中島かずきのマンガ語り』(中島かずき/宝島社)

 今年1月期のロボットアニメ枠『ダーリン・イン・ザ・フランキス』は、コミカライズを『To LOVEる-とらぶる-』の作者・矢吹健太朗氏が手がけるなど注目を集めている。もちろんアニメのデキも素晴らしく、毎週が楽しみな作品だ。そのスタッフの中に「文芸協力」として「中島かずき」氏の名がクレジットされている。氏はこの作品の制作を担当するアニメ制作会社「TRIGGER」とは縁の深い人物で、多くの作品に脚本家として参加。その熱いドラマ作りには定評がある。そんな氏が、自身の漫画趣味を赤裸々に綴った『中島かずきのマンガ語り』(中島かずき/宝島社)を上梓。西日本新聞に連載されたエッセイなどをまとめたもので、氏の「漫画愛」溢れる一冊である。

 中島かずき氏といえば、テレビアニメ『天元突破グレンラガン』や特撮作品『仮面ライダーフォーゼ』といったヒット作で知られているが、その脚本家としての根源はどこにあるのか。曰く「今の物書きとしての自分の根底には、子どもの時に思いっきり溜め込んだ数々のマンガ作品の思い出がある」という。本書は氏の記憶に残る漫画作品が、自身の思い出話とリンクして語られていく。

 氏によれば「僕は『少年マガジン』と『少年サンデー』が創刊された昭和34年に生まれた」という。まさに漫画と共に人生を歩んできたともいえそうなタイミングである。当時は漫画を「低俗なもの」と扱う風潮の強い時代だったが、それでも氏は幼少より漫画に傾倒していくのだ。そして最初に買ってもらったコミックは「『鉄腕アトム』だったと思う」と記憶を辿る。やはり昭和世代の漫画好きにとって、キーパーソンが手塚治虫先生となるのは道理といえよう。しかし漫画の『アトム』で天馬博士がアトムをサーカスに売るエピソードを読んで、本作が単なる子供向けの漫画でないことを感じ取ったというから、その感性の鋭さはさすがというべきか。

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 本書で紹介されている漫画の数々は、その多くが1960~1970年代の作品である。そしてそこにこそ、作家「中島かずき」に影響を与えた作品が存在するのだ。例えば『男組』(雁屋哲:原作、池上遼一:作画)は、氏がシリーズ構成を務めたオリジナルアニメ作品『キルラキル』に大きな影響を与えており、そのスタッフには『男組』が課題図書として出されていたという。また中島氏は「劇団☆新感線」の座付作家でもあるのだが、その公演作品にも「ある漫画」の影響が出ていると語る。それは『1・2の三四郎』(小林まこと)という漫画だ。登場するキャラクターたちがお気に入りだそうで、氏の手がける『髑髏城の七人』の捨之助や『轟天』シリーズの剣轟天の原型はこの漫画にあるのだとか。

 作家や脚本家としての顔のほか、中島氏にはもうひとつ「編集者」という面も存在する。氏は2010年まで双葉社に編集者として勤務していたのである。このときの思い出として「石川賢」という漫画家のエピソードについて、本書では大きく紙幅を割いている。中島氏は『デビルマン』などで知られる漫画家・永井豪氏の作品に強く惹かれていたが、そのアシスタントだった石川氏の作品にも衝撃を受けていた。それが編集者となって実際に石川作品に携われることとなった感激が、本書では切々と語られる。確かにこれは編集者にしか味わえない喜びといえるだろう。

 そういえば思い出したことがある。かつて私が勤めていた会社で『スーパーロボット大戦』シリーズのアンソロジーコミックを編集していた。私が直接担当していたわけではなかったが、よく「双葉社のナカシマさん」から電話がかかってきていたことは覚えている。それが「中島かずき」氏であることは、本書を読んで間違いないだろうと感じた。意外なところで、懐かしい記憶が呼び覚まされたものである。

文=木谷誠