仕事力を高めたいビジネスマン必見の食事法 集中力アップのために甘い物は間違い?

食・料理

公開日:2018/3/1

『仕事のパフォーマンスが劇的に上がる 食事のスキル50』(川端理香/かんき出版)

 残業が悪と見なされることもある現代、限られた時間内で確実に成果を挙げるために「仕事のパフォーマンスをアップ」させることは、ビジネスマンの誰もが求めることではないだろうか。

 その希求に対する答えを「食事のとり方」という観点から明らかにしてくれるのが『仕事のパフォーマンスが劇的に上がる 食事のスキル50』(川端理香/かんき出版)だ。
 管理栄養士としてオリンピック・メダリスト、プロ野球選手、Jリーガーなど、さまざまなジャンルのトップスポーツ選手をサポートしてきた川端理香氏。食事を整えることで、スポーツパフォーマンスを上げるだけではなく、集中力や思考力を高め、疲労回復やメンタルケアまでをも図ってきた。その食事法を、われわれ一般のビジネスパーソンに向けてわかりやすく噛み砕いて、説明してくれる。

■トップアスリートは頭もいい! それはなぜ?

 スポーツ選手というと「脳まで筋肉でできている」などと揶揄されがちだが、各競技で活躍しているトップアスリートには、頭のよい人が非常に多いのが実際だという。なぜなら、アスリートは膨大な量の作戦やオペレーションを限られた時間の中で覚えなければならず(すなわち、記憶力・集中力)、その情報を試合の各局面に合わせて正確にアウトプットしなければならないからだ(これは思考力・判断力)。

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 また、連戦中に高いパフォーマンスを発揮し続けるには、疲労回復に気をつかわなければならないし、試合や練習にしっかりと取り組むためには、集中力やメンタルケアも必要になる。

 これらの能力を高めるために重要な役割を果たすのが「食事」だというのが、川端氏の指摘だ。体作りに効果的な食事や食材はなんとなくイメージしやすいが、集中力をつける食事、思考力・判断力を上げる食事、疲労回復に効く食事、メンタルを整える食事などがあることが、科学的に裏づけられているということは、ちょっとした驚きではないだろうか。

 集中力、思考力・判断力、疲労回復、メンタルケア。これらはビジネスシーンで高いパフォーマンスを発揮するために重要なもの。その食事のノウハウを、トップアスリートだけに独占させておくのは、どう考えてももったいない。

「目標を掲げる」

「知識を蓄積する」

「ルーティーンにする」

 この3つのステップを踏むことで、ストレスを感じることなく食事を変えることができるという。ぜひ取り組んでもらいたい。

■“疲れたら甘い物” 実は仕事にとってはマイナス要素だった!

 疲れたから、集中力を高めるためにちょっと甘い物をとる。
 これは多くの人が日常的に行っていることではないだろうか? だが、現在の栄養学から見ると、これは間違い。かえって疲れやすくなったり、集中できなくなったりする原因になってしまうのだという。
 甘い物をとることによって血糖値が急激に上がるが、それを下げるために大量のインスリンが放出される。すると今度は急激に血糖値が下がり、その結果として集中力が低下したり、疲労感を覚えたりするというのが、そのメカニズムだ。

 では、集中力を高めるには、どうすればいいのか? その答えは「糖質を気にしながら日々の食事を決める」こと。血糖値の乱高下が集中力の低下や疲労感につながるのだから、その元となる糖質を減らした食事が大切になるというわけだ。
 そして、さらに糖質の少ない食材を選ぶための目安として「GI値」(グリセミック・インデックス値)を挙げ、具体的な食材をリスト化している。GI値というのは、ブドウ糖を100として、血糖値の上がり具合を示す指数のことだ。この数値が低いほうが、血糖値の上昇度合いは緩やかになる。

一部の例: 麺類
 ・うどん(乾): 85
 ・インスタントラーメン: 73
 ・そうめん: 68
 ・スパゲッティ(乾): 65
 ・そば(乾): 54
 ・春雨: 32

 これが本書の第2章「集中力を上げる食事」の概要だ。
 このように栄養学的な解説と具体的な食材・調理法などを挙げながら、

 ・思考力・判断力を上げる食事
 ・疲労回復に効く食事
 ・メンタルを整える食事
 ・サプリメントの正しい使い方

 を教えてくれる。各章に「まとめ」があり、内容を簡単に振り返ることができるのも読み手にとってうれしいところではないだろうか。

 例えば、目の疲労回復に効果的な栄養素として著者は「ルテイン」を挙げている。ホウレンソウ、ブロッコリー、ニンジン、トマトなどの緑黄色野菜や卵の黄身にも含まれている。これらをどうやって摂取すると体内への吸収が効果的なのかという料理法や食材の組み合わせについても丁寧な解説がある。詳しくは、ぜひ本書を手に取ってほしい。

 著者は「食事には人生を変える力がある」と断言している。1日3回食事するとして、1年にとる食事の回数は「1095」回。この回数の食事を、ただ漫然と栄養補給するためのものにしてしまうか、仕事のパフォーマンスアップを図るためのチャンスにするか。それは、あなたが決めることだ。

文=井上淳