野菜に親しみが持てる絵本『やさいのがっこう』最新作は「とうもろこしちゃん」が主人公!

文芸・カルチャー

更新日:2018/3/5

『やさいのがっこう とうもろこしちゃんのながいかみ』(なかやみわ/白泉社)

 なかやみわさんによる絵本シリーズ3作目『やさいのがっこう とうもろこしちゃんのながいかみ』が刊行されました。本書では、いろいろな種類の野菜たちが、美味しく育つことを目指して野菜の学校に通っています。野菜たちは実際と同じようにとてもカラフルで、その表情は可愛らしく、賑やかな表紙が気になってこの本を手に取る子どもたちも多いのではないでしょうか。

 3作目の主人公は、野菜の学校に転校してきた、「とうもろこしちゃん」です。とうもろこしちゃんは長くてきれいな髪が自慢ですが、ある時、その髪が原因で泣いてしまいます。足にひっかかって転んでしまうので、みんなと楽しく遊ぶことができないし、髪を切ろうとしたら、なすび先生に止められてしまい…。八方塞がりになったとうもろこしちゃんは、どんなにつらかったでしょうか。でも、そんなとうもろこしちゃんをみんなが見守り、問題を解決するための素敵なアイデアを考えてくれます。

 このシリーズは、嫌いな野菜が食べられるようになったり、野菜が育つまでの工程を知ったりと、食育に役立つことでも知られています。とうもろこしちゃんにとって、美味しい野菜になるために必要なのは、その長い髪。だから、なすび先生はとうもろこしちゃんを止めたのです。甘くて、プチプチして、子どもたちにも人気のとうもろこし。でも、甘く身が詰まった野菜になるためには、野菜たちなりの頑張りがあります。そう思えば、子どもたちも野菜そのものに興味を持つことでしょう。

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 モノの認識ができるようになってきた1歳半の息子にも読み聞かせをしてみました。物語を理解するにはまだ早いものの、色や形が違う野菜を1つ1つ指差しています。また、とうもろこしちゃんが泣いてしまう場面で、大きめのジェスチャーで泣き真似をしたら、“なんで泣いてるの?” “どうしたらいいの?”といった表情で興味深そうに見つめていました。自分に降りかかった問題を1人で解決できない時、子どもたちはどうすればいいのでしょうか? 時には、1人で悩むのではなく、周りの人に伝えたり、手伝ってもらったりすることでいい方向に向かうような出来事も、子どものこれからの人生にはたくさんあるはずです。

 とうもろこしちゃんは、なすび先生の導きや、野菜の仲間たちと楽しく遊ぶ中で、立派な野菜に育っていきます。子どもたちもこの本を通して、みんなで助け合いをすることや、お手伝いをしてもらったら「ありがとう」と伝えることの大切さを知り、大きく大きく成長してくれたら嬉しい、そんなふうに思えた一冊です。

文=吉田有希

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