「さ・し・す・せ・そ」男子が、毎食ハイカロリーな旨飯を食らう『はらぺこ男子飯』が話題!

マンガ

更新日:2018/4/5

『はらぺこ男子飯』(芳川由実/白泉社)

 迫りくるイケメン5人に、壁際に追いやられる主人公。彼らは飢えた野獣の群れだからね、という母の忠告を軽く流した自分を悔いてももう遅い。「ダメだもう我慢できない」と彼女に5人の手がいっせいに伸びて――と、TL的展開にドキドキしながらページをめくれば、彼らがつかみとったのは彼女の身体ではなく鶏肉パック。あまりの空腹に生で食べることも辞さない彼らは、まさに腹をすかせた野獣そのもの。『はらぺこ男子飯』(芳川由実/白泉社)に登場するイケメンたちは、全員がやや常軌を逸したはらぺこ男子なのである。

 大学生5人が住むシェアハウスで食事をつくる仕事をしていた母が倒れ、かわりに派遣されてきた橙子の奮闘を描いた本作。5人のイケメンは料理の基本「さ・し・す・せ・そ」になぞらえたキャラづくりがされている。

 たとえばクールで無表情がゆえに塩対応に見えてしまうスポーツマンの「し=塩」・塩田岩男。人懐っこいけど、女の子慣れしていなさすぎてときどき妄想が暴走してしまう「せ=醤油」の正野祐介。「さ=砂糖」の佐藤温斗は、自分のかわいさを知り尽くしており、食べるものもインスタ映えするスイーツやおしゃれごはんばかり。食欲は他の4人にも負けないが、体型も気にする彼は、脂っこいものは嫌いだし、茶色くてかわいくないごはんもいや。だからといってカフェ飯なんて腹持ちしないもので他の4人が満足するはずもない。彼のおかげで橙子は「がっつりおいしく食べられて、なおかつ女子も好みそうなおしゃれなごはんを、腹ペコ男子5人前」という高すぎるハードルを課せられることになるのである。

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 というわけで、第1話で彼女がつくったのが「パリパリポテトから揚げ」。薄くスライスしたじゃがいもを衣に揚げた鶏肉は、さくさくしていて食感も楽しく、ディップを用意すればさまざまな味が楽しめる。それにおにぎりを添えれば、がっつり男子飯のできあがりである。とはいえ、5人分のから揚げは全部で30個。おにぎりもひとり4つで20個。まごうことなき肉体労働であるが、同時に、冷めないうちに5人全員分用意する手際を求められる頭脳労働でもある。それなのになくなるのは、一瞬。だがガツガツと夢中でたいらげていく男子たちの姿に、橙子はふしぎな爽快感と達成感を覚えていく。

 どんぶりからはみ出すほど豪快な、まるごと一本角煮丼。尋常じゃない大きさの、3種のお宝ハンバーグ。一食2000kcal近いメニューを次々考案していく彼女は、さすが苗字が「米田」だけあって、米のように粘り強くたくましい。おいしいものをみんなで食べて元気になってほしい彼女の根源的なパワーに、読んでいるこちらもはらぺこになってくる。前述のとおり乙女男子も気に入るメニューばかりだから、ついついつくって食べてみたくなるのだ。

 ちなみにメニューの原案・監修は『オレンジページ』が手がけているから、味も栄養価もおすみつき。女子が毎回食べるには高カロリーかもしれないが、たまにはがっつり食べて英気を養うのもいいかもしれない。

文=立花もも