愛の本質がここにある! Twitterで大反響、史群アル仙の1ページ漫画

マンガ・アニメ

2018/3/8

 もう死んでしまおうかな。そう思うことがあった時、心の底で一番必要としているもの。それは愛なのではなかろうか。世の中の至る所に愛が溢れている。しかし、愛はしばしば枯渇する。なぜか。それは、愛は大変複雑で、非常に歪なかたちにもなり得るからだ。愛する者、愛される者。それぞれの複雑な形の愛は、常に都合よく噛み合ってはくれない。寂しい。その感情は愛が不足したことによる心のSOSだ。「もう死んでしまおうかな」「神様、僕を救ってください」…複雑な人の心は、しばしば愛の枯渇に苦しむ。

 しかし、愛の枯渇にいちいち足を取られていると、生活が成り立たない。満たされない何かに苦しみながら、それに自分で蓋をして、日々闘う現代人。そんな人々は、「愛の本質を描いたもの」に対して人一倍敏感であるようにも感じる。

 多くのTwitterユーザーの共感を得て一躍有名になったクレパス画家・漫画家、史群アル仙さんをご存じだろうか。2014年2月にTwitterで投稿された1ページ漫画「狂人になりきれない男」は瞬く間に何千というリツイートの嵐を呼んだ。この漫画、当時私も共感した身であるのだが、これは「少数の分かる人には分かる」ものだなと感じていた。しかし実際に蓋を開けてみると、非常に大勢の人々の共感を得る結果となった。このことは、多くの人々が根底に隠し持っている(自分自身に対しても隠している)感情の琴線に触れたということを意味するのではないだろうか。

 本稿ではそんな史群アル仙さんの1ページ漫画の作品集『史群アル仙作品集 今日の漫画』と『史群アル仙作品集 今日の漫画2』(ともにナナロク社)をご紹介したい。詩人の谷川俊太郎氏はこの作品集の帯に、「この人は、愛の本質を知っている」というコメントを寄せている。私は、とても有り体な感想になってしまうが、とにかく本書の描くものは「深い」と感じた。愛のよろこび、苦しみ、複雑さ。愛の全てが詰まっている。「自分の手で昭和の漫画の画風を現代へと引き継ぐ」ことを決意したという90年生まれの作者の描いた漫画は、懐かしくて、かわいくて、切なくて、つらい。

 本書は見開きの右側のページに絵、左側に1ページ漫画が収められている。右側の絵の多くは、「孤独な男が、(女神的な)女性に抱かれている」ような構図になっており、ここにも、常に満たされない愛の本質が垣間見える。「寂しい」という感情に支配されたとき、心の底で求めている「こうされたい」「こうしてほしい」が本書に詰め込まれているような気がしてならない。

 本書には、非常につらい作品が多い。しかしそれは暴力的なつらさではない。非常に優しいのだ。繊細な心と心の交わり。脆くて、儚くて、その全てが美しい。そうか、これが“芸術”なのか、と。私は太宰治の『人間失格』を愛してやまないのだが、これに通じるものが本書にはあると感じた。繊細で優しい者たちの、歪でかなしい人生。愛の本質の描写は、手塚治虫を彷彿とさせるどこか懐かしい画風と相まって、読む者の胸をえぐる。胸が痛くて、温かくて、寂しくて。何とも複雑な感情が渦巻く読後であった。

文=K(稲)