究極の美容は化粧も肌ケアもやめること? ビューティーずぼら道、ここに極まれり!

健康・美容

2018/3/13

『みたび! 女のはしょり道』(伊藤理佐/講談社)

「こんなにいいことだらけなのに、どうしてみんなやめないの?」

 2017年にデビュー30周年を迎えた漫画家、伊藤理佐。彼女が出産、育児を経てアラフォーからアラフィフに近づいたとき、ついに肌ケアなし、化粧なしの境地にたどりつくのが『みたび! 女のはしょり道』(伊藤理佐/講談社)だ。冒頭のセリフは本作で最も印象的なセリフである。

■ビューティー雑誌なのに手抜き美容?

 伊藤氏と言えば軽快な語り口と、かわいらしく勢いがある画風で、多くのコミックエッセイを出版している。その中でも本作はビューティー誌『VOCE』で連載中という異色のもの。何が異色かといえば、美容雑誌の連載にもかかわらず「キレイになりたい! でも手間ヒマは惜しんで、できるだけはしょりたい!」という内容だからなのだ。

 キレイになりたいと思いつつ、面倒くささが勝ってしまう伊藤氏。作中でもVOCEの担当編集者に本誌を読んでないのかと突っ込まれるくだりもある。

■はしょってキレイになりたい世の女性たち

 美に対する意識を高く保ち、努力する…ことはそう簡単ではない。時間もお金もかかるだろう。だからはしょって美しくなれたらそれにこしたことはない、と考える女性は実際多い。ビューティーアイテムで“簡単で時間がかからない”ことは機能性の高さを打ち出すことと同じくらい強力なセールスコピーになる(実際に売れているという)。

『VOCE』の読者は、単行本3巻にもわたる伊藤氏の美のはしょり道を楽しんでいる。単に自分とは関係ないギャグとして面白がっている人もいるかもしれないが、やはり多くの女性が共感してしまう内容なのだ。

■えっ…全部やめるだけ? ラクすぎ…!

 さてシリーズ3作目となった本作では、伊藤氏は肌ケアや化粧を一気にやめることになる。ある日出会った本の内容が、伊藤氏の想像を超えたはしょり道だった。本には“全ての化粧品を塗らない”“全身は純石鹸で洗うだけ”にするべしと書いてあった。あまりの楽ちんさに、はしょり道を好んで歩いてきたはずの伊藤氏も腰がひける、そして勇気を出してはじめたこの“極力やめる美容法”により、すぐに肌も髪もキレイになっていく。

 肌ケアも化粧も衣類の洗剤すらも全てやめることが、美の最終結論? もう完結? と思ったが、はしょり道は甘くない。伊藤氏は肌と髪がキレイでも美人になるとは限らないことに気がつくのだ。そして確かに楽ではあるけれど、結局ほどほどにしようとミネラルファンデーションは使うことにするのだった。

■人にはやめられない、はしょれないこともある

 ミネラルファンデは使いつつも“極力やめる美容法”で1年が経過した伊藤氏。結果、肌がキレイになり、毛穴が小さくなり、シミもシワも増えず、お金もかからずと良いことずくめの状態に。そして「どうしてみんなやめないの?」と言いつつ、友人たちにこのやめる美容法をすすめまくる。ある日彼女が父親とお酒を飲んでいると母親が指摘する。

「体に悪いしお金もかかるのに何で毎日お酒飲むの? やめたらいいことだらけなのにどうしてやめないの?」

 ここで伊藤氏ははたと気がつく。美容に手をかけることで、何かすることで心の平穏を保っている人もいる。そういう人はしょれないのだ。そう、伊藤氏のような酒豪が“お酒”をはしょれないように…。

 いずれにしろ美容はいきつく所までいったのでは? と“極力やめる美容法”を実践している伊藤氏だが、すっぴんのありのままになっては、結果をみて落ち込む。また最近化粧が写真に写らない、何をしても“自分”が写ると嘆く。さらに自分と同じように何もしなくてもキレイな人、子供に美人と思われる人とは、結局個体差じゃん…などと身も蓋もない結論を出してしまう。

 そう、彼女はまだまだ揺れ続ける。本作はまだ続く。美のはしょり道も続くのだ。

文=古林恭