発達障害から恋愛依存に。ADHD&アスペルガーを持つ著者のエッジーな恋愛

マンガ

公開日:2018/3/13

『ウチにはクズがちょうどいい ADHD女子の恋愛変歴』(ざくざくろ/宝島社)

「発達障害」という言葉を耳にしたことがあるだろう。最近では、幼い頃から何となく生きづらさを感じていた人が、大人になってから自ら診察を受けて判明する場合も多いという。発達障害はいくつかのタイプに分類され、症状の特徴もさまざまだ。何気なく繰り返していた行動が、実は発達障害のためだった…ということも少なくない。

 発達障害の症状が恋愛傾向に現れたのが、『ウチにはクズがちょうどいい ADHD女子の恋愛変歴』(ざくざくろ/宝島社)の著者、ざく氏だ。自身の半生を赤裸々に綴ったインスタグラムが話題になり、フォロワー数は6万人超に。特に反響が大きかった恋愛編に焦点をあて、書き下ろしを加えてこの度コミックエッセイとして書籍化された。

 感情のコントロールができない、自分が自分の観察者になるような状態になる、「離人症」の症状…。謎の「生きにくさ」を背負っていた著者の発達障害は、30歳の時に「ADHDと軽度アスペルガー」と診断されて明らかになる。ADHDの人は刺激が足りないと脳にモヤがかかったような状態になることがあるため、刺激を受け続けようと、著者のように何かの依存症になる場合が多いという。

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 ふと思い出して頭を抱えたくなるような恥ずかしい恋愛経験の1度や2度は、誰にでもあるもの。しかし、著者が本書で綴る恋愛描写の生々しさは、そんなことまで書いていいの!?とこちらが心配になるほどだ。

■初体験はインド人

 21歳の時、「ファックしよう」とダイレクトに誘われたことで、知り合って1週間でバイト先のインド人コック・アンスールと付き合うことになる。30歳・童貞だったアンスール。キスや前戯も痛いばかりで苦痛、セックスを拒否するとあからさまに機嫌が悪くなるという最低男だったが、初めて自分を好きになってくれた人を手放したら後悔するかも…という想いから著者が中国留学をするまでズルズルと関係は続く。

■中国人夫との結婚生活

 留学開始から数日後、後に夫となる中国人・メガネと出会い、アンスールに電話で別れを告げて付き合い始めることに。著者が生理の時にナプキンを替えたり、失禁の片づけをしたりと尽くすメガネだったが、同時に過度な束縛も始まる。本当に好きな人には自分をさらけ出せない著者は、メガネとの関係を共依存だとわかりつつ籍を入れるが、そのうちメガネのDVが始まり、2人の関係は終わりを迎える。

 発達障害の恋愛をテーマにしながらも、あっけらかんとした語り口で、独特なセックス描写など笑えるシーンも満載な本書。しかし、読み進めるうちに著者が「目に見えない障害」のためにどれだけ葛藤し、苦しんできたかが伝わってくる。漫画を描くことで発達障害への理解を深めようと、情報を発信し続けていることも。

 メガネと別れた後、これまでの恋愛が自己評価の低さからくる共依存関係だったことに気づき、「自分のことを愛してないと他人を愛せない」と実感するシーンでは思わずホロリとする。

 現在33歳になった著者は、日本人のシュヌスさんと再婚。シュヌスさんのおかげで自分自身も、自分以外の人も愛せるようになり、離人感も消えたそうだ。「発達障害を持つ小さい子供達が大きくなる頃には、彼ら彼女達が生きやすい未来が待っていますように」というのが著者の願い。

 恋愛遍歴を赤裸々に綴ってくれたことで、発達障害の症状を持つ人だけではなく、うまくいかない恋愛を繰り返して悩んでいる人も勇気づけられるだろう。笑ったり涙ぐんだりして自分と向き合いながら読んでほしい1冊だ。

文=佐藤結衣