暗殺犯は誰? 顔のない“第三の存在”に脅かされる…ダン・ブラウン最新作『オリジン』日本上陸!

文芸・カルチャー

2018/3/13

『オリジン』(上・下巻 ダン・ブラウン:著、越前敏弥:訳/KADOKAWA)

 世界中で異例の大ヒットを記録した『ダ・ヴィンチ・コード』以来、世界56カ国語に翻訳され累計2億部を突破する「ロバート・ラングドン」シリーズの作者であるダン・ブラウンの待望の新作『オリジン』(上・下巻 ダン・ブラウン:著、越前敏弥:訳/KADOKAWA)が、2月28日に日本で発売となった。昨年秋に世界13カ国で同時発売され、すでに多くのメディアから賞賛を集めている話題作だけに、「待ちきれない!」というファンの方も多かったことだろう。

 本作の主役はもちろんハーバード大学で宗教象徴学を専門とするロバート・ラングドン教授だ。一連の作品で世界中をうならせてきた明晰かつ博識な頭脳が、最新作ではさらにパワーアップ。人類の歴史を覆すかもしれない「謎」を明らかにすべく、美術・歴史・宗教・科学などさまざまな分野の専門知識、そして機敏な“行動力”を武器に、スペイン王室や世界の宗教家たちを巻き込んだ巨大な陰謀に立ち向かう。スリリングな展開、溢れる知性、大胆な舞台設定、その桁外れの面白さは前作以上であり、まさに「一気読み必至!」だ。

 スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館に、元教え子でコンピュータ科学の天才であるエドモンド・カーシュに招かれたラングドン教授。その夜、カーシュは美術館にVIPを招き、世界の宗教を根底から揺るがすかもしれない映像をネット中継することになっていたのだ。だがその発表の直前、カーシュは何者かに額を撃ち抜かれて絶命。オンラインしていた300万人に惨劇は瞬時に伝わり、カーシュ暗殺の犯人は誰なのか、カーシュは何を発表しようとしたのか、すさまじい勢いで憶測がネット上でヒートアップしていく。そんな中、ラングドンと美貌の美術館長・アンブラは目の前の惨劇に呆然としつつも、カーシュの映像を自分たちの手で発表しようと密かに美術館を抜け出す。混乱する状況の中で誰も信じられない2人の脱出を助けたのは、カーシュの開発したAI「ウィンストン」だった…。

 カーシュ暗殺は、発表を阻止したい宗教界によるものか、あるいはスペイン王室の陰謀か、「敵」にまわすには巨大すぎる相手にラングドンが怯まず立ち向かうのもこのシリーズらしい醍醐味だが、さらに本作で印象的なのがインターネットやAIという先端テクノロジーの手触りだろう。謎の情報提供者のリークをもとに陰謀サイトに陰謀論が垂れ流され、世界中で野次馬が雪だるま式に増殖していくコントロール不能感。ラングドンとアンブラを助けたAI「ウィンストン」の人知を超えた圧倒的な能力。そして欠かせない武器は「銃」ではなく、状況を把握させてくれる一台のスマートフォン…登場人物の駆け引きで謎解きが進むのがオーソドックスなミステリとすれば、本作に登場するテクノロジーは顔のない「巨大な第三の存在」として物語をスリリングに加速し、容赦ない時代のリアルを物語に吹き込む。『ダ・ヴィンチ・コード』もすでにネットが普及した2003年に発表された作品だが、テクノロジーと人との密接度は当時とは格段に違う。本作に描かれたテクノロジーがすでに私たちの隣にあるという現実にも、あらためて戦慄するだろう。

 カーシュは死の直前、「我々はどこから来たのか、我々は何者か 我々はどこに行くのか」というゴーギャンの絵画からの一節を引き合いに出した。さらに本書のタイトルは「起源」の意を持つ『オリジン』。果たして、カーシュが語ることのできなかった「人類最大の発見」とは、創世神話を覆す「何か」なのだろうか。ラングドンと物語を走り抜け、その先に広がる世界を、ぜひあなたの目で確かめてみてほしい。

文=荒井理恵