たった7日間で頭は鋭くなるか? 「思考実験」を行った結果…

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2018/3/18

『突然頭が鋭くなる42の思考実験』(小川仁志/SBクリエイティブ)

 物知りがいる。こういう人が近くにいると心強いが、インターネット全盛の時代においては、以前よりその存在感は薄くなってしまった気がする。一方でカンの鋭い人がいる。煮詰まった会議などであさっての方向から切り込んできて、スルスルと解決策を見出してしまうような人。今の時代に求められるのは、こういった発想の鋭さだろう。ではどうしたらそんな能力が身につけられるのか。

 ヒントになるのが本書『突然頭が鋭くなる42の思考実験』(小川仁志/SBクリエイティブ)だ。思考実験とは、簡単に言えば“頭の中で実験をする”ことで、これなら道具や場所はいらない。しかも本書は、たった7日間で頭が鋭くなる、とのこと。そういうわけで、7日間、トライしてみることにした。

 本書は1日目から7日目までに章立てされており、やることは毎日本書を1日分読んで思考実験をする、要するに考えてみるだけだ。日別にテーマが設定されており、それにちなんだ問題が出題される。

 1日目のテーマは「ジレンマ思考実験」。ジレンマとは、相反する2つの価値の間で板挟みになること。例えば第1問はこうだ。ちょっと考えてみてほしい。

設問
あなたは路面電車の運転手だとしよう。
すると突然、前方に5人の作業員の姿が!
慌ててブレーキを踏むが、なぜかきかない。
このままでは5人を轢いてしまう。
しかし、よく見ると、右手に待避線があり、ハンドルを切ればそちらに回避することができる。
ただし、そこには1人の通行人が……。
そのまままっすぐ行けば5人の命を奪うことになる。
かといって、ハンドルをきれば、自らの手で一人の命を奪うことになる。
さあ、あなたならどうするだろうか?

 このような状況にもしなったとしたら、私ならとっさにハンドルをきってしまうと思うが、それはどうしてだろう。5人死ぬより1人の方がましだと思っているからだ。そんな私に、では救える数が多いほど正しいのだろうか?と本書はさらに迫ってくる。

 本書によれば、正しさを決める判断根拠にはいくつかの立場があるのだそうだ。功利主義と呼ばれる、より大きな数、より大きな善が得られるほうを正しいと判断する立場。これに対し、人は手段ではなく、目的であるべきだとする立場。この立場に基づくと、たとえ多くの人の命を救うためであっても、そのための手段として人を殺すのは、正しいとは言えなくなる。よって、列車が進むに任せ、5人を轢くよりほかなくなる。

 あるいは、犠牲になる1人が自分にとって身近な人だったらどうだろうか。子どもだったら、高齢者だったら、ノーベル賞の科学者や犯罪者だったら、と本書の揺さぶりは続く。

 この問題の頭が鋭くなるポイントは「正しさを判断するための根拠をしっかりと吟味しておくことで、瞬時に一貫した判断が下せるようになる」ことだという。

 1日目は他に5題、計6題出題される。ジレンマがテーマなのですっきりした答えがでるものではなく、どれも本気で考えるとけっこう疲れる。2日目のテーマはパラドックス思考実験、3日目は哲学思考実験、と続いていく。

 7日間を終えてみて、思考の幅が広がった気がする。思考実験の効果は、これまでとは違う視点や思考で物事を考えられるようになること。本書のあとがきには、あとは数をこなし、思考実験と実践を繰り返すことで、頭はどんどん鋭くなっていくとある。

「知っている」は当たり前で「よく考えること」がこれからより重要になっていくだろう。そんな時代を生き抜くのに「思考実験」は効果的なツールであると実感した7日間だった。

文=高橋輝実