【瑛太×生田斗真主演で映画化】新生活前に! 本当の友情とは何かを問う『友罪』

文芸・カルチャー

2018/3/18

『友罪』(薬丸 岳/集英社)

「あなたは“その過去”を知っても友達でいられますか」——こんなキャッチフレーズがつけられた『友罪』(薬丸 岳/集英社)は本当の友情とはなにかを考えさせてくれ、2018年5月には瑛太×生田斗真主演での映画化も決定されている作品だ。

 本作は1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇事件)がもとになっており、もしも友情を深めた同僚が世間を震撼させた殺人鬼だったら…ということをテーマにしている。

 物語はジャーナリスト志望の主人公、益田純一が埼玉県にある小さな町工場「カワケン製作所」で働き始めたことを機に繰り広げられていく。益田は自分と同じ日に入社した同い年の鈴木という男に興味を持つ。自分と同じように寮生活をする鈴木は即戦力になれる力を持っており、勤務態度も真面目だ。しかし、なぜか周りから人を遠ざけようとする。益田は初め、こうした鈴木の態度に嫌悪感や怒りを覚えるが、鈴木が抱えている心の闇に触れていくにつれ、鈴木を深く知りたいと思うようになり、間に育まれていく友情に戸惑いを覚えていくのだ。

■損得で友情は得られない

 鈴木の心に触れていくにつれて、益田の中では過去に自分が助けられなかった同級生の桜井学の存在が濃くなっていく。益田と同じ転校生だった桜井は、いじめが原因で自殺をしてしまったのだ。益田はいじめには直接手を出さなかったが、見て見ぬふりをし続けた自分を許せずにいた。だからこそ、鈴木との友情が深くなっていくにつれ、益田は「もしも鈴木を救えたら、自分の過去の過ちも帳消しになるのでは?」と思うようになる。しかし、ふたりの関係が深くになるにつれて、益田は“自分の損得を考えたうえで成り立つ友情では、誰も救えない”ということに気づく。過去はあくまでも過去で、真の友情を築いていくには、目の前にいる相手をしっかりと見つめていくことが大切だと実感するのだ。

 本作で描かれる、こうした益田の成長は「本当の友情は自分も傷つかなければ築いてはいけない」ということを教えてくれる。こうした当たり前のことほど、現実世界で実際に行おうとすると難しい。目の前にいる相手が抱えている感情に気づかないふりをしたり、自分にとって都合がいいように解釈したりするのは簡単だ。だからこそ、友達のために自分は何ができるのだろうと考えていくことが、真の友情を育むための第一歩になっていくのではないだろうか。

■真の友情は盲目的なままでは得られない

 真の友情を築くには好奇心や偏見はもちろん、なんでも許してしまうような盲目的な優しさも持ってはいけない。本作で描かれる鈴木のような罪を背負っているような人と出会うことは稀かもしれないが、人間は完璧ではないから、生きていく中で罪を犯してしまうこともある。しかし、完璧にはなれないから、大切な人の痛みを理解しようと努力できたり、受け入れたいと思えたりもする。仲のいい友達が犯した罪は甘くみてしまうこともあるし、逆に「許せない」と憤りたくなってしまうこともあるだろう。しかし、友達が抱えている罪は盲目的に許さなくてもいいし、怒ってもいいのだ。大切なのは偽りの優しさで罪に蓋をすることではなく、目の前にいる友人を見つめ、知り、気持ちを伝えていくことだ。そうすれば、友達が抱く孤独に寄り添うこともできる。

 新生活が始まる春は、新しい友達と出会える季節でもある。だからこそ、新しい環境へ踏み出したときは、目の前の相手と心で対話をしながら真の友情を築いていってみてほしい。

文=古川諭香