エッチ度高めな園児ギャグ漫画『しいちゃん、あのね』

マンガ

更新日:2018/4/23

『しいちゃん、あのね』(東裏友希/日本文芸社)

 かわいい表紙に騙されてはいけない。

 本屋で表紙に一目惚れをして、帰りの電車で読もうとしたが、早々に諦めて閉じた。子どもが描かれたファンシーな表紙で、突然ハードな夫婦のセックス描写が現れるとは思っていなかったからだ。背後を気にしつつ、家でゆっくりと読むのを楽しみに帰途を急いだ。

『しいちゃん、あのね』(東裏友希/日本文芸社)は『漫画ゴラク』で連載中のギャグ漫画だ。そのポップでキュートな絵柄からは、『真!! 男塾』や『ミナミの帝王』、『江戸前の旬』などが並ぶ雑誌の中で連載されているとは信じがたいが、中身を読めばすぐに納得する。

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 この作品は主人公のしいちゃんが、ピュアな好奇心から、オトナを翻弄していく。しいちゃんはもうすぐ小学校にあがるから、と両親から一人部屋を与えられる。

 大喜びするしいちゃん。そして、まるで付き合いたてかと思うほどラブラブな両親も、ふたりきりの時間を満喫できるようになる……はずであった。

 両親がセックスをしようとすると、狙ったかのようにしいちゃんが部屋に突入。娘に「パパとママはしいちゃんをのけものにするため部屋をわけたんだ?」なんて言われたら、無下にすることもできない。毎回寸止めを強いられる両親は悶々とした思いを強めていく。

 エッチな幼稚園児と聞いて思い浮かぶのは、『クレヨンしんちゃん』の野原しんのすけだが、こちらの作品は女の子である。スケベな気持ちというよりは、単なる好奇心から迫ってくるので、大人はみな怒れずに翻弄されていくのがまた面白い。

 話数が重なるにつれて、しいちゃんの幼稚園のお友達や先生など個性豊かなキャラクターも登場する。しいちゃんが家電量販店で電気マッサージ器を欲しがったり、園児がお遊戯会で「くりとりす」を連呼したり(※“栗とリス”が登場する「くりとりすの冒険」という演劇を、園児たちが自発的にやりたいと申し出たのだ)、がっつり両親のセックスシーンが描かれていたり、日常系のほのぼのしたストーリーの中に織り込まれる下ネタはだいぶギリギリ(というよりはアウト?)である。

 また、ギャグ漫画として十分面白いのだが、時折ホロリとくる回などがあるからニクい。読んでいると、自分の子どもの頃を思い出す。確かにこれくらい幼いときは、なんとなく本能から漫画やドラマに出てくるキスやセックスのシーンを興味津々に見ていたかもしれない。

 ちょっと(?)おませで、可愛いから憎めないしいちゃん。笑って、赤面して、たまに胸が熱くなる。大人のギャグ漫画だ。

文=園田菜々