人気作家・森博嗣が提唱する、驚きの集中力不要論。だらだら推奨の理由とは?

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2018/3/27

『集中力はいらない』(森博嗣/SBクリエイティブ)

「もっと集中力があればいいのになぁ」という場面は多々ある。目の前のことにすぐ取り組まなければならないのに、なんだかソワソワして違うことを始めてしまって……。なかなか片付かないタスクを目の前にため息をついてしまう。

 そんな悩みを打ち破るタイトルの書籍が 『集中力はいらない』(森博嗣/SBクリエイティブ)。著者は人気小説家の森博嗣氏。森氏は多作で、原稿が早いことでも有名だ。そんな著者が「集中力はいらない」と言うのには驚いてしまう。

 森氏はかつて大学准教授として工学を研究していた。そのかたわら執筆した小説『すべてがFになる』が第1回メフィスト賞を受賞し、その後作家になった。「集中力はいらない」と言う彼が成功した陰には、どんな秘密があるのだろうか?

 著者は、集中せずに物事を達成する力を「分散思考」と名付けている。世間には「集中」がよしとされる風潮、謂わば「集中信仰」がある。それにとらわれずに、むしろ効率的に物事を進められるという方法が「分散思考」だ。それは一体どういうものなのだろうか。そして本当に集中力は不要なのであろうか?
 著者によると、「集中しないこと」にはさまざまなメリットがあるという。今日はそれをいくつか紹介していきたい。

●複数のことが同時にできる

「同時進行には合理性がある」と著者は言う。

 たとえば料理をする人ならばわかるだろうが、煮込む時間は手を放して他の工程をすすめることができる。工作で塗装をすれば乾燥を待っているあいだに別の作業ができる。
 それを応用して、進めなければならないなにかがあるとき、あらかじめ他の「やること」を用意してみてはどうだろう。
 ひとつのことに集中しなければならないと考えるとやる前から疲れてしまうが、あっちに行ったりこっちに行ったりと作業をすれば、気が紛れるうえに効率的だ。
 途中で作業を止めて別の作業をし、また戻ってくる、というのは一見遠回りに思えるが、他の作業自体が息抜きになるためモチベーションが維持でき、効率的だ。

●アクシデントに対応できる

 分散型の仕事法を採用していると、不測の事態に対して対応できる。なぜなら時間設定に余裕があるからだ。

 たとえばAとBという仕事を進めているとき、Aでアクシデントが起こったときには、Bに使うはずだった時間で対応できる。だがAだけに集中するスケジュールを組んでいると、時間に余裕がないため慌ててしまう。時間を複数の作業でシェアすることによって、何か不都合が起こった場合でもきちんと対応できるのだ。あらかじめ複数のことをするタイムスケジュールを作っておけば、不測のなに かが起こったときにもそれに使う時間を配分して調整できる。

●分散思考が客観的視点を作る

 たとえば会社に入りたての頃は、なに かひとつの仕事に集中して一生懸命やることが多い。
 それが、地位が上がりリーダーになっていくと、部下たちのそれぞれの仕事を客観的に把握する必要がある。ときにフォローしたり、ときにマネジメントしたりする必要がある。

 そのように分散型の仕事をしていると、ひとつの仕事から離れて別に移るときに、それまでやっていたことを俯瞰で見る余裕が生まれる。
 そのおかげで、それぞれの仕事の完成度が高くなる。

 いかがだろうか。本書はありきたりの方法論ではなく、著者本人が実践、経験してきたことに基づいている。そのおかげで、まるでエッセイを読んでいる気分になる。悩みをかかえた質問者とのインタビュー形式のQ&Aも載っており、分散思考の仕組みがより具体的にわかるようになっている。
「集中力はいらない」ということについて説明してきたが、もちろん、もともと集中するのが得意だという人は、無理にそれを捨てる必要はない。

 この一冊はぜひ「集中しようと思ってもできない」と悩んでいる人に読んでほしい。集中力のなさがかえって効率的で完成度の高い仕事を生むかもしれないというポジティブな考え方は、多くの人をムダやストレスから救うだろう。

文=女生徒