FPなのにお金で大損!? お金の専門家が赤裸々に明かした“反面教師”な投資本

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公開日:2018/4/4

『現役FPのしくじり体験から学ぶ 月15万円を確実に稼ぐ 守りの投資術』(鉄人社)

 他人の成功談よりも、失敗談の方がはるかに役に立つという話もある。成功というのは時の運や環境などにより大きく左右されかねないが、失敗というものには大なり小なりはっきりとした原因があるため、反面教師として活かせるという期待があるからだ。

 ファイナンシャル・プランナー(以下、FP)として活躍する藤原久敏さんの著書『現役FPのしくじり体験から学ぶ 月15万円を確実に稼ぐ 守りの投資術』(鉄人社)も、みずからの失敗談を赤裸々に伝える一冊。タイトルからおおよその察しがつくとおり、本来、マネープランニングの専門家であるはずの藤原さんが、身近なお金にまつわる“しくじり”を明かしている。

 例えば、リーマン・ショックの少し前、話は2007年頃にさかのぼる。当時、藤原さんは外国為替証拠金取引“FX”で南アフリカの通貨「ランド」を大量に購入した。当時のレートからすると、日本円にして1100万円超にものぼる金額。しかし、FXは現金を担保にできるため、実際に投資したのは200万円ほどだったという。

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 日本ではあまりなじみのない「ランド」だが、当時は金利が高く、1万ランドあたりでスワップ金利により毎日30円ほどもらえたと振り返る藤原さん。実際の金額としては70万ランド保有していたため、毎日のように2000円ほどが手に入る生活が続く中で「不労所得生活も夢でない」と妄想に浸る日々だった。

 しかし、天はいつまでも味方してくれない。ほどなくして訪れたリーマン・ショックの煽りを受けて、円高が進むたびに「ランド」の相場がみるみるうちに下落。当初、1ランド=16円だったはずが、最終的には1ランド=7円まで落ち込み、結果として損失を被ることになった。

 過去の自分に「好事魔多し―うまくいっているときほど、意外なところに失敗が潜んでいる」とダメ出しをする藤原さんは、当時について「仕事は軌道に乗り始め、子どもが生まれ、(他の)投資収益も順調に積み上がっており、順風満帆といってもよい時期でした」と振り返る。どこか有頂天になっていたのか、いずれにせよ「余裕があり過ぎて、アレコレ考え過ぎて、あらぬ方向に走り出してしまう」という、誰にでもありうる一時の迷いを身をもって体感したという。

 さらに、FPの立場からもみずからの過去を分析する藤原さんは、このときに「短期・長期、いずれにせよ、高金利通貨(≒新興国への投資)には、大きなリスクがある」のを学んだという。その後もじつは、高金利ながらも政情が不安定であるトルコの通貨「リラ」で似たような失敗を繰り返しているのだが、これらの戒めとして「投資の世界では“夢”に心を奪われると、情報収集や分析作業が疎かになる」ことを実感をした。

 昨今は、仮想通貨などの話題をきっかけに、投資もしくは投機という言葉を目にする機会が増えてきた。ただ、忘れてはならないのがどんな場面でも冷静さを保つということ。FPがお金にしくじるというのは“ミイラ取りがミイラになった”かのような、何とも皮肉な話にも思えるのだが、専門家ですら“やらかす”というのは誰にとっても必ずや大きな教訓になりうるだろう。

文=カネコシュウヘイ