友達と一緒にいると、楽しいけど、疲れる…「対人不安」を解決したい!

暮らし

公開日:2018/4/5

『「対人不安」って何だろう? 友だちづきあいに疲れる心理(ちくまプリマ―新書)』(榎本博明/筑摩書房)

 人間、誰しも孤独はつらい。かといって、ずっと誰かと一緒にいるのも疲れる。帰り道、一緒の方向に帰る友達と夢中でおしゃべりをして盛り上がった後、別れてひとりになると、なぜだかホッとする自分がいる。そういう体験をしたことがある人は大勢いるはずだ。

 どうしても周りの目を気にしてしまい、自由に振る舞えない。このような「対人不安」と呼ばれる心理は、実はかなり多くの人が抱えている問題だ。そこで本稿では『「対人不安」って何だろう? 友だちづきあいに疲れる心理(ちくまプリマ―新書)』(榎本博明/筑摩書房)という1 冊をご紹介したい。本書は著者が専門家としての立場から対人不安の様相やその背後にある心理メカニズムを詳細に解説し、「人の目」に縛られるこの社会の中で対人不安を和らげ健全に生きていくことを目指す書だ。

■「人の目」に縛られる苦しさ

 多くの人はたえず周囲の視線を意識し、周囲の期待に応えるように振る舞っている。みんなと一緒におしゃべりをしているとき、「今日は疲れているから、早く帰りたいな」と内心で思っていても、「今日は疲れているから、帰るね」と言って自分だけ抜けることもしにくい。

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 無理してつきあい、「いつまでしゃべっているんだ」「いい加減、切り上げたいな」と、内心イライラしながらも、みんなに合わせるために自分もテンションを上げてしゃべっている。そしてなぜだか、そんな自分を突き放して見ている醒めた自分もいる。そんなあり方は大いにストレスになるのだという。

 このような心理状態は、自分だけが特殊だと感じて自己嫌悪に陥りやすいものだが、多くの人が同じような不安を抱えているのだと著者は指摘する。「みんなそんなもんなんだ」というような視点を持つことも、自身の気持ちを楽にする上では大切なのだ。

■「人の目」に映る自分より、相手そのものを見る

 対人不安が強いと、相手のことを気にしているつもりでありながら、じつは自分のことしか眼中になかったりすると著者は指摘する。それは「相手の目に映る自分の姿が気になって仕方がない」からだ。自分自身に意識を集中することを自己注視といい、これは不適切な言動をなくすために必要だが、自己注視が行きすぎると不安が強まりすぎてぎこちなくなりやすいという。

 そこで大事なことは、相手そのものに関心を向けることだ。相手の様子や話に注意を払うことでその気持ちを察することができれば、気持ちの交流もしやすくなる。また、相手も自分と同じように対人不安が強く、こちらからどう思われているのかを気にしていることがわかったりもするので、不安を和らげてあげるように心掛けるのがよい。

 このように自分のことばかりにとらわれず、相手の思いを共有し、自己中心的な視点から抜け出すことは、対人不安を和らげるためのコツなのだ。

 入学、就職、異動など、これからの季節はなにかと対人関係にエネルギーを割きやすい。本書を参考に対人不安を和らげ、素晴らしいスタートを切りたいものだ。

文=K(稲)