トランプとロシアをつなぐ黒い人脈とカネ。ニュースでは見えてこない真実を暴く!

社会

2018/4/6

『共謀 トランプとロシアをつなぐ黒い人脈とカネ』(ルーク・ハーディング:著、高取芳彦、米津篤八、井上大剛:訳/集英社)

 2016年11月、アメリカ合衆国大統領選挙に勝利したドナルド・J・トランプ。選挙戦中は、政策そのものよりもスキャンダルや問題発言が取り上げられることが多かった。その中でも最大の問題が、いわゆる「ロシア疑惑」ではないだろうか。トランプを勝たせるために、ロシアとトランプ陣営が共謀した疑いが生じたのだ。

 トランプ側は、この疑惑を真っ向から否定。しかし今年2月には、大統領選干渉疑惑で、ロシア国籍の13人とロシア関連の3団体が起訴された。果たしてトランプ当人もこの件に関わっているのか。今後も目が離せない状況だ。
『共謀 トランプとロシアをつなぐ黒い人脈とカネ』(ルーク・ハーディング:著、高取芳彦、米津篤八、井上大剛:訳/集英社)では、トランプとロシアの間の隠された関係を徹底的に追跡。大統領選挙におけるトランプとロシアの関係を示すメモを発端に、両者の関係を30年以上さかのぼり検証する。

■アメリカとロシアを結ぶ黒いルートに迫ったメモの内容は?

 その問題になったメモは「スティール報告」と呼ばれ、2017年の初めには、メディア関係者の間で回し読みされていたという。作成者は、元イギリス諜報員のクリストファー・スティール。最初のメモは2016年6月に作成されているのだが、それ一つをとっても非常に衝撃的な内容だ。

・ロシア政権は少なくとも5年前からトランプを支援、援助している。
・FSB(ロシア連邦保安庁)はトランプのモスクワでの行動を通じて、彼を恐喝できるだけの弱みを握っている。
・ロシアの諜報機関は長年にわたり、ヒラリー・クリントンの弱みとなる情報を収集している。
本書より一部抜粋

 この後にもメモは追加され、2016年6月から11月までに、合計で16本ほど作成されたとのこと。このメモの内容がもし事実であれば、ロシア側の米国大統領選挙への干渉を裏付けるものとなりそうであるのだが……。

 本書によれば、トランプとロシアの関係が始まったのは、1980年代だという。トランプが、ビジネスのために1987年に初めてモスクワを訪れた頃だ。この訪問は思ったほど注目されなかったが、それから2ヶ月もたたないうちに、ニューヨーク・タイムズ紙に驚きの見出しが出る。「トランプ氏、大統領選へ意欲か」。著者は、この頃に初めて、トランプが真剣に政治家を目指す兆しを示したと指摘する。しかしながら、この当時の出馬表明が売名行為だったのか、あるいは真剣な意図があったのかは謎のままだという。

■不動産王トランプとロシアとの古いつながりを明かす

 その後、トランプはビジネスを通してロシアとの関係を築いていく。当時、トランプが所有権を持っていたミス・ユニバースの2013年のコンテストは、モスクワで開催された。ロシアの不動産デベロッパーで“ロシアのトランプ”と呼ばれてきたアラス・アガラロフからは、コンテストのホストをする権利金として、約1400万ドルが支払われたそうだ。

 そのアガラロフは、コンテストの数日前にプーチンから名誉勲章(ロシアで民間人に与えられる最高の勲章)を授与されている。前述のスティール報告には、アガラロフがロシアにおけるトランプの行動に深く関わっていることが記載されている。さらに、2017年7月にトランプの長男であるトランプ・ジュニアが公開した電子メールのやり取りでは、アガラロフの息子であるエミンの名前についても言及されている。

 アガラロフとの関係は、「トランプとロシアをつなぐ黒い人脈とカネ」の一例に過ぎない。本書には、他にもトランプと関わってきたさまざまな人物が多数登場し、それぞれについての詳細な関係性が記録されている。

 ここに書かれていることがすべて事実なら、アメリカとロシアだけではなく、日本をも含めて世界を揺るがす事態にもなりかねない。一日も早い事実の解明に期待したい。本書は、大国同士を結ぶ闇のルートを徹底的に追跡するジャーナリストの“執念”が込められた一冊である。

文=松澤友子