夏までに6パックを手に入れろ!! 速く確実に筋肉をつける本格自重トレーニング

スポーツ・科学

公開日:2018/4/7

『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆/サンマーク出版)

 日に日に暖かくなり、薄手のシャツを着る機会が増えるこの季節、見られても恥ずかしくない体形を手に入れるために「筋トレ」に取り組もうと考えている人も多いのではないだろうか? 一方、日頃からジムに通って筋トレをしているのに、なぜか思うように筋肉がつかないという人もいるだろう。そんな筋トレ初心者や筋トレ伸び悩み派にぜひ読んでもらいたいのが、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆/サンマーク出版)だ。

 著者は日本体育大学准教授という肩書きの傍ら、「バズーカ岡田」という愛称でテレビ・雑誌でも解説者として活躍する岡田隆氏。解剖学、筋生理学、理学療法を学び、アスリートから高齢者まで幅広い人々を指導してきた岡田氏が、その科学的な知見をもとに「自重で、短時間で、体をつくる」トレーニング法をわかりやすく解説してくれる。

 特別な器具の必要がないので、自宅で簡単に始められるのはうれしいところ。分厚い胸板やきれいに割れた腹筋など、理想の夏に向けて要領よく筋肉をつけたいと思っていた人には見逃せない一冊だ。

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■ねらった筋肉を最速で鍛え上げるコツが、わかりやすく写真解説されている!

 本書で紹介する筋トレの特徴は「つけたいところに」「最速で」筋肉をつけること。そして、自分の体の重さを利用する「自重トレーニング」という点だ。そのために重要なポイントとなるのが「筋肉を盛る技術」と「体脂肪を削る技術」。たとえば「盛る技術」では、

(1)最初の「事前疲労」で、ねらった部位を集中的に刺激
(2)ショートインターバルで筋肉の合成力を高めるホルモンなどの分泌を促進
(3)つねに力を抜かない。戻す動作も意識を高めることで刺激を最大化する
(4)筋線維の走行と動作の向きを合わせることで、トレーニングの効率を上げる
(5)縮んでしまいがちな筋肉の可動域を最大化させて、鍛え漏れを防ぐ

 というコツを押さえることで、ねらった筋肉を、最短時間で、効率的にビシバシ鍛え上げる方法が解説されている。

 各部位のトレーニング・メニューも理論にのっとって組み立てられているが、各種目で鍛えるべき筋肉の部位が豊富な写真とイラストで明確に図解されているので、正しい動作のイメージがとてもつかみやすい。たとえば胸の筋トレメニューは次の4種目だ(1セットたった3分30秒!)。

 1つめの「パームプレス」は、胸の筋肉全体を刺激して普段は使っていない部分まで目覚めさせ、疲労させる種目。全力で手を押し合い、大胸筋をぐっと盛り上げる。筋肉の動きを目で確認できるので、トレーニング初心者にも感覚がつかみやすい種目だ。

 このスクイーズ種目と呼ばれるパームプレスの後、胸のアウトラインをスクエアに整える種目、胸全体を厚くする種目、胸の上部を盛る種目、と順にトレーニングを展開する。“自己流腕立て伏せ”を延々とくり返すことだけでは実現しない「美しい胸板のライン」を、効率的に手に入れる技術が盛り込まれたプログラムだ。
 自分ひとりで行う筋トレでありがちなのは、回数や荷重にこだわるあまり、フォームが崩れてしまうこと。これでは筋肉を効率的に鍛えることができないうえ、ケガの危険性もアップしてしまう。本書では正確なフォームの写真解説が全トレーニングについているほか、各種目の動きをチェックできるよう、特別動画サイトへのQRコードがついているので安心かつ便利だ。

 こうした組み立てのトレーニングを、胸、肩、腹、背中、腕、下半身の6部位に分けて解説している。どの種目もピンポイントでしっかりと効くので、短時間でも習慣的にこなしていけば、確実に体の形が変化していくことを実感できるだろう。

■体脂肪を減らせば、さらに筋肉が美しく浮き上がる

 本書のもうひとつの柱となるのは「削る技術」。これは、体脂肪を効率的に減らしていく方法だ。そのための運動法に加えて、「高たんぱく低脂質」を中心にする食事法などを紹介している。

 そもそも筋肉が大きくなったり小さくなったりする仕組みを考えると、身体のなかでは、

いつもより力を出した

力がもっと必要

筋線維を太くする

 という反応が起こっている。筋たんぱくの合成を促すホルモンや、筋肉の材料となる栄養素が体内にいきわたって初めて筋肉は大きくなるのだから、食事の知識は重要なものだと改めて実感する。
 その筋肉の主材料となるのは日々の調達が必要な、必須アミノ酸と呼ばれるものだと本書では紹介されている。なかでも鶏胸肉は、入手しやすく効果も高い最強の食材だそう。体脂肪を減らすためにおすすめの調理法や効果的な食材の組み合わせについては、本書内で丁寧に解説されているので、ぜひ一読してほしい。

 著者の岡田氏は、日本社会人ボディビル選手権で優勝した経験も持つ肉体改造のプロ中のプロ。その彼が、「トレーニング環境が整っていなかったら自分もやるし選手にも勧める」と公言するのが、本書で解説する筋トレ法だ。

 ボディビルダーのように筋骨隆々とした肉体までは期待しない、ジムに通うほど具体的には考えていない、でも今年の夏までに締まった肉体を手に入れたいと願う筋トレ入門者は多いだろう。そんなあなたにとって、限られた時間内で効率的に筋肉をつけるという本書のメソッドは最適だ。この一冊を片手に、筋トレ道に入門してはどうだろうか。

文=井上 淳