最悪のシナリオ、衝撃のラストシーン……『ただ離婚してないだけ』で描かれる、「不倫」の果てに待つものとは

マンガ

更新日:2021/1/26

『ただ離婚してないだけ』(本田優貴/白泉社)

 誰かを好きになるという気持ちは、理性でコントロールできる感情ではない。むしろ、それが「いけないこと」であればあるほど、感情に火がつき燃え上がってしまうことも少なくない。その最たるものが「不倫」ではないだろうか。公にできない恋心、配偶者に隠れての逢瀬、タブーとされている行為。その果てにはどんな結末が待っているのか……。

 3月29日(木)に第1巻が発売された『ただ離婚してないだけ』(本田優貴/白泉社)は、そんな不倫をテーマにしたマンガだ。

 主人公となるのは、フリーランスのWEBデザイナーである正隆。結婚7年目を迎える高校教師の妻・雪映との関係性は、実に冷え切ってしまっている。正隆はそんな日常生活の憂さ晴らしをするかのように、セフレである萌との不倫を楽しんでいるのだ。

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 妻に隠れて萌を家に誘い込み、夫婦共有の場でセックスをする。出張だと嘘をつき、温泉旅行を楽しむ。正隆がしている行為は、どれも決して許されない行為ばかり。第1巻では、不倫の一部始終が正隆の目線で描かれているのだ。

 しかし、途中から物語の様相が徐々に変わっていく。萌の妊娠が発覚し、それと同時にすべてが雪映にバレてしまい、追い込まれる正隆。そこで出した結論は、夫婦関係の再構築だった。そこから、夫婦再生へと物語が展開していく……と思いきや、またひとつどんでん返しが待っている。そして、それが実に衝撃的である。

 第1巻のラストシーン、これはまさに最悪のシナリオといっても過言ではないだろう。著者である本田さんは、『東京闇虫』(白泉社)を手掛けた作家だ。本作のストーリーラインは、『東京闇虫』でアンダーグランドな世界を描ききった本田さんならではのもの。よくある不倫劇を、予想もつかないサスペンスへと変化させていく手腕はさすがの一言だ。

 ただ離婚していないだけ、のはずだった毎日が、どんどん堕ちていく。理性でコントロールできない感情が、ひとりの人間の人生を狂わせていく。果たして、正隆はどうなってしまうのか。

 ここ最近、創作界隈でもブームになっていた「不倫モノ」に、またひとつ新たな衝撃作が誕生したようだ。

文=五十嵐 大

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