たたみ屋が24時間営業で売上増になった秘密は? 売れないものを売る方法

ビジネス

公開日:2018/4/10

『売れないものを売る方法? そんなものがほんとにあるなら教えてください!』(川上徹也/SBクリエイティブ)

 今更ながらものが溢れている現代。当然、ものが良くても必ずしも売れるとは限りません。売れないものを「ものは変えずに」「お金をかけずに」「時間もかけずに」どうにかして売ることができたら、どんなに素晴らしいでしょう。
 そんなムチャぶりともいえる問題を解決するヒントがギュッとつまった本が『売れないものを売る方法? そんなものがほんとにあるなら教えてください!』(川上徹也/SBクリエイティブ)です。

 著者の川上徹也氏は数々のキャッチコピーや文章を手がけてきた腕利きのコピーライター。「物語で売る」という手法を体系化し“ストーリーブランディング”と名づけた第一人者としても知られています。本書は、売れなかったものが売り方を変えて大ヒットした事例を数多く紹介し、あなたに新しいアイデアを提案してくれます。

■売れないものは基本構文“5W2H”を見直すことで売れる

 本文の提案の基本は、今までの売り方を「5W2H」のポイントに沿って変えるというものです。
 5W1Hは、ご存じの通り“Why(なぜ)、What(何を)、Who(誰が)、Where(どこで)、When(いつ)、How(どうやって)”のそれぞれの頭文字をとった、もともとは“文章を構成する時の基本的な要素”です。
 本書ではそこに、How much(いくら)という要素を加えた「5W2H」というマーケティング視点を提案し、それぞれに関する模範策を解説しています。

advertisement

【章立ての一部】
●ダムで「カレー」が、水族館で「パン」が飛ぶように売れる理由
 ~「ウリ」を変える~(=What
●なぜタクシーはのろのろ走り、たたみ屋は24時間営業を選んだのか?
 ~「売る時間」を変える~(=When
●漁港で「ケーキ」を、地球の裏側で「雨どい」を売る
 ~「売る場所」を変える~(=Where
●おじさんがダメなら女子高生、女子高生がダメならおじさんに売れ
 ~「売る相手」を変える~(=Who
●「2割引き」と「2割キャッシュバック」どちらが売れるのか?
 ~「売る値段」を変える~(=How much
●売れないならお客さんに売らせるワザもある!?
 ~「売る方法」を変える~(=How
●「もったいない」や「社会貢献」でもっと売れ
 ~「売る目的」を変える~(=Why

■売れるヒントは、あなたのすぐ隣にあるかもしれない!?

 この章のタイトルをみて、興味が湧いてきたという人も多いのではないでしょうか。
 たとえば、第2章(Whenを変える視点)の“なぜたたみ屋が24時間営業を選んだのか”。ここでは、深夜帯も営業しているのでたたみ替えのために店を閉めたくないという飲食店からの注文をとることで売上が7倍になった、たたみ屋の事例を紹介。

 また、第3章(Whereを変える視点)の“地球の裏側で「雨どい」を売る”では、まずオーストラリアから商品の問い合わせがきた話を紹介。インターネットを通じて雨どいに関する問い合わせや購入希望の連絡がきて以降、その会社はそれまで想定していなかった海外向け販売のために、英語対応のウェブサイトをつくりました。その後、売上の3割を海外向けが占めるまでになり利益も上がったのだとか。

 本書では、他にも5W2Hの視点で売り方の物語を変えて、大きな需要を掘り起こしたおもしろい事例が、多く述べられています。

 本書を読むと、売り方を変えて売れるようになった事例は、実は突拍子もないものではなく、きちんとマーケティングの基本的要素を見直したことに因ることが理解できます。
 あなたが、会社の不良在庫をいきなり「売ってこい!」といわれても、「そんなのムリに決まってる……」と考える前に、まずは本書を手にとってみてはどうでしょう。5W2Hの視点でストーリーを変えることができれば、売ることにきっと役立つはずです。

文=古林恭