食がテーマの仁義なき抗争勃発! アメコミの注目作『GET JIRO!』のススメ

マンガ・アニメ

2018/4/9

 ここのところ、アメコミが何かと熱い。様々なヒーローやヴィランズ(悪役)たちが相次いで実写映画化されていて、2大巨頭のDCコミックスが『ジャスティス・リーグ』などを展開し、“アベンジャーズ”を擁するマーベルコミックスが次々とヒット作品を世に放っているなど、今後もまだまだ話題は尽きそうにない。

 ところで、映画をきっかけにアメコミの原作を手に取りたくなるというのもファンにとってはあるある。バットマンやスパイダーマンといった有名どころのバックボーンをさらに掘り下げたいという気持ちがある一方で、次にブレイクするかもしれない作品を掘り出したいというの欲も自然と湧いてくる。

 そんな数ある作品の中から紹介してみたいのが、近未来のロサンゼルスで日本人の板前が仁義なき“食”の抗争に巻き込まれる『GET JIRO!』(誠文堂新光社「G-NOVELS」)だ

TM&(C) Anthony Bourdain, Joel Rose and DC Comics.

■マナーの悪い客にブチ切れるジローの狂気と寿司へのこだわり

 舞台となるのは“それほど遠くない未来”のロサンゼルス。スポーツ、映画、音楽業界といった娯楽産業がことごとく崩壊し、食文化に支配されたその街では、世界中の食を融合させた料理を提供するインターナショナル派と、健康食のみを提供する菜食主義派の抗争が起きているというハチャメチャな世界観で物語は展開していく。

TM&(C) Anthony Bourdain, Joel Rose and DC Comics.

 その街の一角で1人、寿司屋を切り盛りするのが主人公のジローだ。ねじりはちまきに“ザ・板前”のような格好、腰に自慢の刺身包丁をしまいこんでいるいでたちは、まさにアメリカナイズされた日本の職人そのもの。しかし、寿司という“食”への情熱は並々ならぬものがある。

TM&(C) Anthony Bourdain, Joel Rose and DC Comics.

 のっけから垣間見えるのは、ジローの寿司へかける“狂気”ともいえるほどの熱い思い。例えば、3人の客がお店を訪れた際には、カリフォルニア・ロールを注文した挙句、醤油にわさびをベチャベチャと混ぜる客たちにブチ切れてしまうなど、これまたハチャメチャながらも、厳格なこだわりを持つ職人として描かれている。

■おいしいものに出会った瞬間の恍惚としたジローの表情も見どころ!

 ふだんはわりと寡黙。口数が少なく腕っ節の強い職人として描かれているジローだが、そんな彼も満面の笑みを浮かべる瞬間がある。それは、おいしいものに巡り合ったときだ。

TM&(C) Anthony Bourdain, Joel Rose and DC Comics.

 例えば、街中にあるなじみのレストランを訪れた際には、豚の血で作られたブラッドソーセージに舌つづみを打つジロー。食に対する派閥同士の抗争が繰り返される街中ではチンピラとも冷静に対峙する彼だが、日常でみせるけわしい表情から一変、これ以上ないほどの至福の表情を浮かべる。

TM&(C) Anthony Bourdain, Joel Rose and DC Comics.

 ただ、そんな幸せを感じられる瞬間もつかの間。インターナショナル派と菜食主義派の抗争が激化する街では、両派閥がジローを引き入れようと画策する中、ふたたび彼は仁義なき“食”の争いに巻き込まれていく。

 全300ページ超のボリュームがある本書は2部構成になっていて、ジローの前日譚となる【Blood and Sushi(邦題『血と寿司』)】も収録されている。筆者個人としては、ぜひとも実写映画化してもらいたいアメコミ作品なのだが、彼の生き様をぜひその目で味わってもらいたい。

文=カネコシュウヘイ