よくなったけど、引退。――なぜ花咲徳栄高校野球部は日本一に? 強豪26校の部活に「強い組織づくり」のヒントが!

スポーツ・科学

2018/4/13

『最強部活の作り方 名門26校探訪』(日比野恭三/文藝春秋)

 今春のセンバツ高校野球も優勝をかけた強豪校が熱い闘いを繰り広げた。彼らが甲子園の舞台に辿り着くために懸命に頑張ってきた日々を思うと、自然と応援にも力がはいるというものだ。こうした球児たち同様、日本全国津々浦々にはさまざまな競技で日本一を目指す高校生たちがいる。強くなりたい、勝ちたい…熱い思いを胸に日夜努力する彼ら。その活動のベースは主に「部活動」だ。

 最近は「ブラック部活」などそのあり方が問題視されているが、部活動はスポーツや文化活動の機会が生徒に低額で提供される場であり、各競技の裾野を広げてきたのは間違いない。たとえば2020年の東京オリンピックにおいても、部活動が人材育成に果たす役割は決して小さくないはずだ。

■サッカー部から書道部まで!「勝ち」にこだわる26校

 そんな「部活動」という「場」の持つ強さについて、あらためて実感させてくれる一冊が登場した。人気スポーツ専門誌の『Number』での連載企画をまとめた『最強部活の作り方 名門26校探訪』(日比野恭三/文藝春秋)は、全国優勝の経験がある部を日本中に訪ね、「なぜ強いのか」「なぜ強くなるのか」を関係者取材で明らかにしていくという一冊。取り上げられているのはバレーボール、サッカー、陸上、バドミントン、卓球、体操、フェンシング、バスケ、ホッケー、相撲など全23種目の26校。中には競技かるたや書道部といった文化系部活もあるが、「勝ち」へのこだわりは体育会系に負けてはいない。

 本に登場するのは流石に全国のその道の強豪校ばかりとあって、練習のキツさは半端ない。とはいえどの生徒にも悲壮感や不当感はなく、指導者を信頼してついていく姿が印象に残る。一方の指導者もただ高圧的に厳しい練習を課すわけではない。「最初はとにかく鍛えることが自分の役割だと思って、厳しくしつけをやって、型にはめたチームづくりをしていました。だけど、それでは自分たちの展開にならなかった時にもろいんです。やっぱり考える力、解決する力を持たせないと壁は破れない」とある教諭が語るように、生徒の「自主性」を大切にする指導へと現場も様変わりしてきたようだ。

■ビジネスに応用したい「強い組織づくり」の秘訣

 基本的な考えを伝えた後は生徒に任せる指導者、繰り返し考えを説き定着させることで行動させようとする指導者、生徒の不安をなくすことに注力する指導者など、そのスタイルはいろいろ。だが、いずれの指導者にも、目の前の生徒たちに常に向き合うことで発見した「俺流」を貫くゆるぎなさがあるのは確かだ。この本が同じ部活動の現場に参考になるのは間違いないが、おそらく若い部下を育てる立場のビジネスマンにも大いにヒントになるだろう。なにせ「強い組織づくり」の秘訣がつまっているのだから。

 やっとつくって、やっとよくなったけど、引退。いなくなっちゃうんだ――昨年の夏の甲子園の優勝校、花咲徳栄高校野球部の岩井監督は最後にそうつぶやく。あらゆる部活動の「宿命」だが、だからこそむしろ短い時間に生まれる「熱量」もあるのだろう。あらためて部活動に励むすべての人々にエールを送りたくなる一冊だ。

文=荒井理恵