夫もいない、貯金もなし! 仕事からも逃げ出したい! すべてを投げ捨て海外に逃亡したら……

暮らし

公開日:2018/4/12

『人生リセット留学。』(たまきちひろ:著、ナディア・マケックニー:監修/朝日新聞出版)

 こういうコミックエッセイ……好きだなぁ(笑)というのが、一番の感想だ。

『人生リセット留学。』(たまきちひろ:著、ナディア・マケックニー:監修/朝日新聞出版)は、仕事はスランプ、夫とは離婚、親は亡くなり、お金もないアラフォー女性の実体験が綴られている。

「圧倒的な居場所のなさ」を感じた著者のたまきちひろさんは、「命がけで脱走する日本兵の心境」で海外へ逃亡。「留学」という体で、ロンドンへ。

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「この漫画は、とあるアラフォーおひとり様のもがき苦しむ人生の物語である」と前置きされている通り、「海外での生活は刺激的で最高でした! 自分の価値観も変わり、今は最高に幸せです! ついでにカッコいい白人彼氏もできちゃいました。みなさんも留学してみるといいですよ」的なハッピーエンドではない。

 コメディタッチにイギリスでの「つらい」生活が描かれているので、暗い気分になることはなく、笑ったり共感したりしながら読める作品なのだが、ラストを言ってしまうと、結局たまきさんは「大きな変化はなく」日本に戻ってくる。

「人生大成功しました!」的な自己啓発本に近い内容とか、「ノロケかよ」と思うような夫婦(恋人)もののコミックエッセイが、それほど心に刺さらない自分は(心が狭くてすみません)、本作で「海外留学したくらいじゃ、やっぱ人生変わらないんだな」というのが分かって、それが妙に「現実的」で面白かった。そういう意味で、冒頭の「すごく好きだなぁ」に繋がる(笑)。

 さて、肝心の内容へ。日本での生活に絶望し、別世界を求めてイギリスへ留学した、たまきさん。だが、想像と違うイギリス生活の「酷さ」に愕然とする。

 ホームステイ先は常軌を逸した「汚部屋」だったり、イギリスでの生活は「意外と地味」で、売っている洋服はダサい上に粗悪で高い。トイレも少ない。家賃も交通費も東京より高い。インフラは最悪。街や電車、公共施設は「ゴミと犬のフン祭り」という汚さ。

「インフラもサービスも後進国並みなのに物価や料金は東京より高くて、街並みが汚い」ことにイライラ。……ちなみに、私の友人に「ロンドン大好き!」と何度も旅行に行っている子もいるので、人にもよるのかもしれない……。

 本書では、たまきさんの「オシャレじゃない留学ライフ」の他に、イギリス人の結婚観や、西欧の非モテ男子の生態など、海外文化についても触れられていた。

 たまきさんがイギリスに行って一番熱くなったのは、「メイルストリップ」という男性のストリップショーだ(こういうところも、オシャレじゃなくて好き)。

「イギリスでの生活は、この世の終わりみたいな日々でした。でも、今ここでやっと報われてる――!」と、イケメンマッチョの裸体に大興奮&大感動。「メイルストリップは女子にとってまさに見るデトックス」だったという。この時、初めて「日本に帰りたくない!」と思ったそうだ。

 だが、ついに帰国の日が近づく。

「あたしの人生は、何ひとつ変わってない」とがっかりしているたまきさんは、シェアメイトの女性によって、自分が「ミッドライフ・クライシス」になっていることに気づかされる。

「ミッドライフ・クライシス」とは、中年期特有の心理的危機のこと。ライフスタイルの変化により、うつ病や不安障害がともなうこともあるという。

「一生懸命がんばってきたけど、これが本当に私の求めてきたものなの?」「私の人生の目的って何なんだろう……」など、人生の折り返し地点で、色々と悩んでしまうのである。

 イギリスに来て、たまきさんは自分が「ミッドライフ・クライシス」に陥っていたことを知り、「日本からは逃げられても自分からは逃げられない」と気づく。

「人生はリセットできなかったけど、少し気は済んだ」

 たまきさんは「ミッドライフの悪あがきを続ける」と、現在は日本で前向きに「あがいている」そうだ。

文=雨野裾