「私、僕、俺」は英語でどう使い分ける?『君の名は。』が最強の英会話教材になる理由

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更新日:2018/5/1

『バイリンガル版 君の名は。』(KADOKAWA)

「単純に、自分の好きな作品に登場するセリフたちから英語を学べるという、語学習得には欠かせない“楽しむことで続けられる”という大切な部分を満たしつつ、なおかつ日々の暮らしの中で本当に使える言い回しを数多く身に付けられるという点でも、『君の名は。』は他のバイリンガルコミックとはまた一線を画す教材だと思います」

 そう語るのは英語Twitterで人気No.1の「今日のタメ口英語」を運営するKazumaさん。
 北米版のテキストをもとに英語を学ぶことができる『バイリンガル版 君の名は。』(KADOKAWA)では英文解説を担当しています。

 バイリンガル版とは、「セリフが英語になったマンガ」に和訳も一緒に掲載されているもので、英文フキダシの隣に記された和訳を確認し、意味をとりながらマンガを読んでいけるというもの。
 本記事では『君の名は。』が最強の英会話教材になる理由を詳しくお伺いしました。

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■高校生同士の瑞々しい会話は「本当の意味での日常英会話教材」

 そもそもバイリンガル版コミックが企画されるほど人気のある「日本でも英語圏でも高い知名度を誇る作品」は、ある意味特殊な状況下のものが多いように思います。アクションやバトルといったヒーロー、冒険、異世界物、それに歴史物や探偵物などですね。

 もちろんそういった作品にも日常会話がないわけではありませんが、ここまで頻度高く、同級生とのやりとりで使われるスラングやくだけた表現、おばあちゃんや学校の先生、バイト先の先輩といった身近な目上とのやりとり、自分への問いかけや葛藤、などなど日々僕たちが使っている現代の言葉がそのまま英語で、しかも実生活に近いシチュエーションでふんだんに盛り込まれたものは少ないんじゃないでしょうか。

 一般的な日常英会話集というと、どうしてもお店での注文やものごとの説明などの一文を紹介するものになってしまいますけど、

「うわー」「ええーっ!?」「はぁ?」「えっ」「あっそうだ」

 なんていう、なにげないフレーズにたくさん触れられるのも、瞬間を切り取って1コマとして表現されているマンガならではだと思います。映像とは違って一時停止の必要もないし、表情やそのときの空気を感じられるのも大きな利点ですね。同じ言葉でも状況や態度で印象が変わることは日本語同様にありますから。

■「私、僕、俺」は英語でどう使い分ける?

 瀧と入れ替わった三葉がクラスメートの前で、「私、僕、俺」とおどおどしながら話し方を変えるあの有名なシーン、「一人称が基本Iで統一されてる英語じゃ無理だろ」と思うでしょう。実はその通りで、ここでは一人称ではなく「どうやったら通学路で道に迷えんだよ」という同い年の友達からのツッコミにどう返すかを工夫しています。英語版に日本語訳をつけると、「すまない(Excuse me を略したくだけた表現)」「すみません」「ごめん」「なんだっていいじゃん(ほっとけ)」といった感じです。こうしたところからも、相手や関係性によって英語のニュアンスを変える方法を知ることができますよね。



『君の名は。』はその壮大で感動的なストーリーももちろんですが、ありふれた日常がリアルに描かれているからこそ、共感や感情移入をたくさん生んだ作品でもあると思います。そうした生き生きとしたやりとりを英語のマンガで軽快に読み進めながら、わからない部分では和訳や解説を手軽に参照することで、ふだん自分が使う日本語のニュアンスで英会話ができるようになっていきます。

 楽しみながら、日常で本当に使える汎用性の高い英語を。そんなあれもこれもがいっぺんに叶う本書をぜひ、学習の役に立ててみてください。

【解説者紹介】
Kazuma

10代のときに単身アメリカへ。現地でできた友人と一緒に暮らす中で、「学校で習う英語では自然な会話はできない」と悟る。その後もブルックリンなどへの渡米を繰りかえし、「自然な会話の表現とは何か?」を考えながら現地で交わされる言葉を少しずつ集めていく。2013年5月より自身の経験から得られた英語を紹介するTwitter『今日のタメ口英語』(@e_kazuma)を始める。ふだん使いの自然な英語を紹介するスタイルが注目を集め、フォロワー数は20万を超える。