日本人のおなかの不調は腸内のカビのせい! カビを増やす原因とは?

健康・美容

更新日:2018/5/1

『おなかのカビが病気の原因だった』(内山葉子/マキノ出版)

 便秘・下痢・腹痛といったお腹の不調に悩まされる人は少なくない。「毎日ヨーグルトや発酵食品、サプリメントを摂ってるんだけどな~」という人にぜひ読んでほしい1冊がある。

『おなかのカビが病気の原因だった』(内山葉子/マキノ出版)によると、お腹の不調の原因の1つとして、腸内でカビが悪さをしているかもしれないのだ。医学博士で著者の内山葉子先生が本書でその仕組みと原因、そして解決法を解説しているので、その一部をご紹介しよう。

■私たちの腸内には100兆個の菌とカビが棲んでいる!

 まずは私たちの腸内について説明したい。腸内には様々な菌が棲んでいる。その数、100種類以上で、なんと100兆個。その大半が「細菌」にあたり、「草むら」のように腸内でうごめいているので、「腸内細菌叢」や「腸内フローラ」と呼ばれている。

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 この細菌たちは、大きく3つに分けることができる。善玉菌と悪玉菌と日和見菌だ。善玉菌が悪玉菌より数を増やすと、日和見菌が善玉菌に味方する働きをするので、腸内環境が良くなる。一方、悪玉菌が増えると日和見菌が悪い働きをするので、腸内環境が悪くなる。

 ここまでは誰もが何となく聞いたことのある話だ。では、本題のカビの話をしよう。実は、私たちの腸内にはカビが棲んでいる。カビは「真菌」にあたり、多くが「カンジダ・アルビカンス」という種類だ。「げっ! 私の腸にカビが生えているの!?」と驚愕するが、健康な人の腸内では、先ほどの細菌たちがワーワー活動しているので、カビの活動は抑えられている。しかし何らかの原因でカビが増殖してしまうと、体に異変が表れる。それが以下の5つだ。

1. 腸の炎症を引き起こす
2. さまざまな有害物質を発生させる
3. 低血糖を引き起こす
4. 免疫トラブルを起こす
5. 不眠や自律神経の乱れなど、体の悪循環を引き起こす

 ちょっとシャレにならない不調が並ぶなぁ。腸でカビが増えると、低血糖や免疫トラブルまで起きてしまうのだ。もしくは、すでにこの5つの不調に悩まされている人は腸内でカビが増えている……かもしれない。これらが引き起こされるメカニズムや症状の解説は本書に譲るとして、なぜカビが増えるのだろうか。内山先生は、その原因の1つとして「安易な抗生物質の使用」を挙げている。

■風邪薬を飲むと便秘気味になってしまうのはなぜ?

 風邪をひくと「細菌をやっつける」抗生物質をもらうことが多い。問題は、風邪のために処方されたのに、やっつける必要のない細菌まで攻撃してしまうことだ。それが先ほどの腸内細菌叢。処方された風邪薬を飲んで、なんだか便秘気味になってしまう原因の1つがこれだったのだ。

 しかしもっと大変なことが起きているかもしれない。というのも、抗生物質は「細菌」を殺せても「真菌」は殺せない。つまり腸内の細菌が激減した結果、抑えられていたカビが動き出す可能性がある。

 内山先生によると、日本の多くの医療機関が抗生物質を安易に処方しており、その結果、日本人の腸内の環境に悪影響を及ぼしていると指摘。ただし抗生物質が効く病気も多数存在するので、本書をよく読むか、かかりつけの医師に相談するなど、その服用について素人判断しないことも覚えていてほしい。

■甘味や炭水化物はカビのエサ。過剰摂取がNGなものは?

 また、「じゃあ抗生物質に気をつけたらいいのか~」と早合点するのも待ってほしい。内山先生は他にもさまざまな原因を挙げている。まず、甘いものや炭水化物の多量摂取だ。これらはカビのエサになってしまうので、増殖の一因となる。また、パンやチーズ、麹漬けの食品、一部のアルコール類も取りすぎはNG。これらに共通しているのは「発酵食品」ということ。本来は体に良いものだが、多量摂取は腸内のカビに悪影響を与えてしまうことがある。同様にキノコ類も取りすぎは控えよう。また、サプリメントの過剰摂取もNG。吸収しきれなかった成分がカビのエサになりかねないのだそうだ。

 本書を読んで感じるのは、体に良いとされる食品やサプリメントでも、行き過ぎた摂取は毒になりかねないことだ。昨今の健康ブームで、毎日のようにメディアが「○○が体に良い!」と情報を流している。それに誤りはないのだろうが、なんでもかんでも食いつくのは間違いかもしれない。

 私たちの体は、太古から積み上げてきたあらゆる体の仕組みを重ねて繊細にバランスをとって、健康を保っている。最新科学は新しい発見を与えてくれるが、それよりも私たちの体は、大昔から食べてきた食品を適量の範囲で摂取してほしい、と願っているのではないだろうか。

 本書は「おなかのカビ」をメインに解説しているが、それだけでなく腸内の免疫機能や仕組みも紹介しており、いかに私たちの健康が腸で支えられているか痛感する内容となっている。本書が健康や毎日の生活を見直すきっかけになれば幸いだ。

文=いのうえゆきひろ