小保方晴子が綴る、「あの日」からのその後——無間地獄から生還するまで

社会

2018/4/19

『小保方晴子日記』(小保方晴子/中央公論新社)

 STAP細胞は、まるでUFOのような存在になった。公には否定されたものの、その存在を確信している人も少なくないからだ。たとえば、米ハーバード大学では、小保方氏の研究を元に、現在、世界の各国に特許を申請中だ。また、STAP細胞の確認作業を続けている海外施設もある。今年の3月に、小保方氏が上梓した『小保方晴子日記』(小保方晴子/中央公論新社)によれば、今も海外からの研究職のオファーがあるという。海外では、STAP細胞は生きている。

■STAP細胞騒動は、その後どうなった?

 本書によれば小保方氏は、精神を病み、地獄にいるような日々を送ったという。その要因となる出来事は、氏の前著『あの日』(講談社)に詳しく記されている。両方を読めば、なぜ?がわかるはずだ。

『あの日』には、研究の日々の生活とともに、研究過程が丁寧に綴られている。少なくとも、一度分化した細胞が初期化するというSTAP現象が無理なく導かれたことはわかるだろう。検証実験がうまくいかなかった理由は、『日記』からは、共同研究者の影響が大きかったと読み取れる。

 本書によると「NHKスペシャル」が、ねつ造の根拠とした、「ES細胞」の窃盗事件は、「事件そのものがあったのか疑わしい」と警察は結論を出したそうだ。小保方氏側は、番組に対して、BPO(放送倫理・番組向上機構)へ、人権侵害の申し立てを行い、BPOは2017年2月に、「名誉棄損の人権侵害が認められる」「放送倫理上の問題も認められる」との判断を発表した。

■うつとPTSD(心的外傷後ストレス障害)で、精神科へ入院

 本書には、STAP騒動に関してだけでなく、体調、食べたもの、見た夢なども記されている。騒動の後、頭痛、腰痛、はき気、不眠などの症状に襲われ、毎日大量の薬を飲んだとある。それでも効かないことも多く、ついには、入院することになった。うつ状態の時にありがちな自殺願望も、毎日起こったそうだ。

■手記を書くことで、復活の手がかりをつかむ

 学位のはく奪や理研からの返金請求など、最悪の状況に追い込まれるが、希望も出てきたことも述べられている。それが『あの日』の出版だ。ベストセラーになったことで、小説の執筆依頼もあった。精神的に落ち着いてくると、身体も復調してきた。そして、断薬を試みる。

 本書は、このあたりで終了しているが、確かに希望は見えてきたようだ。あとは、行き場のない憤りをどう鎮めるかだろう。ノーベル賞級の研究と研究生活を奪われた怒りを手放せというのは難しいに違いないが、全ては、今後の自分の大いなる飛躍に必要だったと考えれば許せる気持ちも生まれるのだろうか、と思う読後だった。

文=今眞人