クレーンが建設ビルの屋上にそびえ立つ謎…外で見かけるすごい技術

暮らし

公開日:2018/4/25

 身のまわりにある「便利なモノ」には、それぞれに「便利さの理由」がある。だが我々は、それをよく知らぬまま、気づかないままに日々生活している。この春刊行された『雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科』(KADOKAWA)は、ふだんよく目にする「モノ」について、それにまつわる“すごい技術”を図解で紹介する一冊だ。


 今回の記事では、建設現場などでよく見る、ビル屋上に設置された「クレーン」について、そもそもこの重機をどうやって上に上げたのかをわかりやすく説明しよう。

■屋上にどう上げた!? 建設現場の「タワークレーン」

 高層ビルの建設工事で、一番高いところでマメに活躍しているモノがある。「タワークレーン」だ。建築中によく目立つので、工事の見物人の人気者になっている。

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 タワークレーンは高層ビルの建築に欠かせない。低層のビル建築ならクレーン車で資材を最上階まで届けられるが、高層ビルの建設ではそうはいかないからだ。資材を最上部に持ち上げるには、どうしてもタワークレーンの力が必要になる。

 ところでこのタワークレーン、見ていると不思議なことが起こる。ビルの成長に合わせ、自分自身も高い位置にどんどん移動しているのだ。

イラスト:小林哲也

 タワークレーンの一連の工事の流れは、(1)組み立て→(2)クライミング→(3)解体の順で行なわれる。(1)の「組み立て」は足場を固める作業。次の(2)では、ビルの成長に合わせ、クレーンを尺取虫のようにはい上がらせていく。(3)の「解体」では、親亀・子亀・孫亀方式で屋上から分解していく。すなわち、ひと回り小さい子クレーンを元の親クレーンの隣に設置し、それで親クレーンを解体する。次に、その子クレーンは、さらに小さい孫クレーンを隣に設置して解体するのである。これらを繰り返すことで、御用済みのタワークレーンは地上に下ろされるのだ。最後に残った解体用クレーンは人力で解体し、エレベーターで階下に下ろすことになる。

 尺取虫的にタワークレーンがクライミングする方法には、クレーン本体がマストを昇る「マストクライミング」と、工事の進捗とともに工事中の鉄骨を利用して土台部分を階上に上げる「フロアクライミング」がある。前者は超高層マンションの建築に、後者は超高層のオフィスビルの建築によく利用される。

 ちなみに、電線の鉄塔を建築する際にもクレーンのクライミングが用いられる。山奥に高い鉄塔が立っている謎も、これで解決されるはずだ。

イラスト:小林哲也

 

『雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科』
涌井良幸・涌井貞美/KADOKAWA

コドモもオトナもタメになる「モノのしくみ」の話――身近にある「便利なモノ」には、それぞれに「便利さの理由」があるが、我々自身、それをよく知らぬままに日々生活している。本書は、家電からハイテク機器、文房具まで、日ごろよく目にしているモノを下支えする“すごい技術”を、イラスト図版とともに解説する一冊!