アラサー姉妹が奮闘! さびれた商店街の再生のために何ができる?

文芸・カルチャー

2018/4/28

『メガネと放蕩娘』(山内マリコ/文藝春秋)

 東京に住んで驚いたことの一つは、「元気な商店街が多いこと」だ。

 地方で暮らしていた頃は、商店街で買い物することは少なかった。近くに商店街が存在することは認識していたものの、シャッターを下ろす店が年々増加する一方なので、足は遠のいていった。

 内心残念な気持ちはあったものの、郊外にドーンと建設された大型ショッピングモールに車で買い物に行く日常にもすっかり慣れ、商店街が地域にこれまでどのような役割を果たしてきたかなど、考えることもしなかったのだ。

 山内マリコの『メガネと放蕩娘』(文藝春秋)は、そんなシャッター通りと化した商店街を寂しく思い、奮闘するアラサー姉妹の物語である。

 著者が地元、富山の商店街を徹底取材して執筆した本書は、商店街の意外な真実が描かれていた。

 本書の舞台は、とある地方都市の全長約300メートルの商店街。

 主人公は、商店街の老舗書店「ウチダ書店」の長女で、市役所の広報課に勤務する33歳の“メガネ”女子タカコだ。

 最盛期には100以上の商店が軒を連ねていた商店街だが、現在、店として機能しているのはわずか10軒ほど。ウチダ書店も売り上げはピーク時の半分以下まで落ち込み、商店街はすっかり寂れてしまった。

 物語は、そんな寂しい商店街に、17歳で逃げるように姿を消した妹のショーコが、臨月のお腹を抱え、突然帰ってくるところから幕を開ける。

 28歳になった“放蕩娘”のショーコは、帰郷1日目で女の子を無事に出産する。

 シングルマザーとして子育てをすることを決意したショーコだが、退院した際、彼女は赤ちゃんを抱えて商店街のアーケードの真下に立ち尽くしてしまう。

「ねえ、タカちゃん、これなに? なんでこんなに人がいないの?」

 唇を震わせてタカコに問いただすショーコは、東京でカリスマアパレル販売員として働いていたキャリアを活かし、様々な人を巻きこみながら、商店街を盛り上げるべく、動き始めるのだが――!?

 本書を読んで一番驚いたことは、シャッターを下ろしている店が、別にお金に困って潰れるわけではない、という事実だ。

 タカコより上の世代は、経済が右肩上がりだった時代に儲けて、子どもを東京の大学に入れ、人生アガリ。もう必死になって稼ぐ必要がないから、シャッターを下ろしていられる。自宅も兼ねているお店を、今さら見ず知らずの他人に貸すのも面倒……という事情を抱えていた。

 そのため、商店街を盛り上げるために、まちづくりを学ぶ大学生と共に企画したファッションショーも、当事者であるはずの商店街の人々は積極的に手伝おうとしない。市役所の担当者も、予算を使い切るために、その場限りのにぎわいを演出する計画を進めていく。

 そんな八方塞がりの状態に頭を抱えながらも、愛する商店街を何とか存続させようと、タカコの他に、地方活性化に必要だと言われる、「よそ者・バカ者・若者」たちがそろい、「商店街シェアハウス化計画」や「マンスリーショップ運営」など新しい試みを次々と展開していく。

 勝ち逃げした旧世代に阻まれて、手も足も出ない状態の商店街で、厳しい現実と折り合いをつけながら、奮闘し、成長していく姉妹はとても格好良く見えた。目の前の問題を、看過せずに自分のことだと認識し、解決しようと試みることは、誰でもできることではないはずだ。ましてや対峙するのは「街」だ。闘う相手が巨大すぎる。

 商店街の真実と、勢いのある姉妹たちの活躍を、ぜひその目で確かめてみてほしい。ラストは、意外な所に物語が着地するのだが……。涙がホロリと頬を伝うかもしれない。

文=さゆ