外国人労働者が100万人を超える時代―日本が共生の道へと辿り着くために

社会

2018/5/3

『新 移民時代 外国人労働者と共に生きる社会へ』(明石書店)

 2016年、日本における外国人労働者が100万人を超えた。しかし、そのうち2割は留学生だという。どうして学業のために来日した外国人がアルバイトに明け暮れているのか。また、「移民政策は取らない」と主張し続ける政府と、実際の外国人労働者数の矛盾は何を意味しているのか。

 九州の西日本新聞はキャンペーン報道「新 移民時代」を展開し、大きな反響を呼んできた。それをもとに一冊の本へとまとめたのが『新 移民時代 外国人労働者と共に生きる社会へ』(明石書店)である。日本経済を存続させていくためには、外国人労働者の役割が見逃せなくなっている。しかし、社会が外国人を受け入れる態勢を整えられていないのもまた事実だ。日本人と外国人が共生していく道について、本書はレポートや著名人インタビューを通して探っていく。

 外国人留学生には「週28時間」とアルバイト時間の上限が定められている。しかし、実際には28時間を超えて働き続ける留学生は後を絶たない。そして、日本企業側も彼らの存在を黙認している。むしろ、外国人留学生のアルバイトなくして現場が回らない企業も多い。最低賃金で雇用できる外国人は中小企業や地方都市にとって欠かせない戦力だ。

 劇作家・平田オリザ氏は現状を「政府の本音と建前のはざまで生み出されたひずみ」と分析する。政府の支持基盤である保守層に考慮すると、外国人労働者は大々的に受け入れられない。しかし、財界の支持を得るためには、賃金の安い外国人労働力を増やす必要がある。その結果、「外国人留学生はアルバイトであって労働力ではない」との逃げ道を政府が用意するようになった。

 急増する外国人留学生に対し、「留学ビジネス」も展開されている。日本語学校は乱立し、日本語教師もまた外国人というケースも珍しくない。しかし、留学ビジネスのエスカレートは新たな問題も生み出した。日本語学校による外国人生徒の「囲い込み」である。系列の専門学校以外に生徒が進学することを許さず、やる気を失った生徒たちは進学先で学級崩壊を起こすようになる。また、授業の一環として「職業実習」を行わせる学校もあるが、実態は、企業と提携して労働力を搾取していることも多い。留学生を増やすなら、「名ばかり学校」への厳密なチェックも必須だろう。

「技術移転」や「労働力の教育」のため、積極的に外国人実習生を受け入れる日本企業も出てきた。経済が成長中の海外市場に進出したい建設業界、人手不足が慢性的な課題になっている介護業界などは代表例だろう。だが、成功例は少ない。日本で覚えた技術が帰国後、現地で役立つとは限らないからである。日本企業が外国人を教えるだけでなく、外国の文化を学ぶ意識が不足しているのではないだろうか。

 そのほか、外国人労働者や、日本人と外国人が築いた家庭をめぐる「いじめ」も深刻化している。一部の外国人が起こした社会問題や犯罪もまた、日本人の心の壁を高くしているのだろう。そんな中、福岡市東区馬出在住の松本等さんは、地域住民と留学生との交流会の中心にいる。松本さんは2003年、中国人元留学生のグループによって親族を殺害されていた。東区1家4人殺害事件。松本さんの心の傷は癒えることがない。だからこそ、松本さんは悲劇が繰り返されないために共生の道を探る。

「留学生も一人一人違うじゃろ。外国人にも馬出に住んで良かったと思われるように、優しいまちづくりを進めたい」

 歴史上、多くの国家が外国人を虐げ、大きな汚点を残してきた。現代の先進国ですら、移民を敵視する風潮を作り上げてしまっている。日本も同じ過ちを繰り返すのか、それとも寛容な社会へと生まれ変われるのか、その瀬戸際に差し掛かっているのだ。

文=石塚就一