社員の定着率96%で日本一!社員が辞めない会社の「ひまわり型経営」って?

ビジネス

公開日:2018/5/7

『日本一社員が辞めない会社』(小池修/ぱる出版)

 世間では新人研修も終わり、新卒社員が部署に配属される時期かと思います。しかし、厚生労働省の調査によると、新卒社員の3年以内の離職率は約32%にも上るといいます。「最近の若者は堪え性がないから」と諦める前にご自身の職場を見回してみましょう。もしかすると新入社員が辞めてしまうのは、職場の環境が原因かもしれません。

 社員の離職率に頭を悩ませる経営者に読んでほしいのが、『日本一社員が辞めない会社』(小池修/ぱる出版)です。離職率が高いといわれる介護業界で、驚異の定着率96%を達成しているデイサービスセンター・コンパス(リハプライム株式会社)を経営する著者が、社員を定着させる方法を紹介しています。

 著者が提唱する「ひまわり型経営」からは、社員から望まれる理想の経営が見えてきます

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■社員の待遇改善を第一に考えるべし

 2011年にデイサービスを開業した当時、著者も他社と同じく社員が定着しないことに悩んだといいます。退職理由は主に労働時間でした。「人手が足りないので休暇がとれない」という、ありふれた問題です。普通であれば、「儲かったら改善するから」と社員に忍耐を強いるところですが、著者は思い切った決断をしました。

 当時は、1店舗4名体制で運営しており、そこに新たに1名の余剰人員を抱えるのは負担が大きかった。そこで別地域に新店舗を開くという異例の決断をしたのです。4名に対して1名は無理でも、8名に対して1名の余剰人員なら釣り合いがとれると判断したのです。マイホームや株を売り払い、それまでの退職金を使い果たしての不退転の決意でした。その結果、社員は有休を取得できるようになり、顧客も増えて業績も上向いたといいます。

 給料についても、社員ひとりひとりの希望を聞き取り、昇給を望む社員には施設長になれるように出世のロードマップを提示。さらに訪問件数に応じて報奨金が出るインセンティブ制度を導入し、働けば働くほど手当が増える仕組みを作っていきました。

 まずは何よりも社員の待遇改善。それが会社作りの第一歩だと訴えます。

■社員が同じ方向を向く「ひまわり型経営」

 退職理由で給料や労働時間と並んで多いのが「上司や職場の人間関係」。これもどの職場にもある課題です。その解決方法は、それぞれの会社にある「経営理念(社是、社訓)」だといいます。

 その時の機嫌によって決断が二転三転する社長や、そんな社長の顔色ばかりうかがう上司のもとで仕事をしていては、誰だってやる気をなくしてしまいます。そんな上司でも「経営理念」は破れません。「経営理念」を破ってしまえば、社長であっても会社に相応しくない人間になってしまいます。

「経営理念」が社長から社員ひとりひとりまで行き渡り、行動指針が明確であれば、全体が同じ方向を向いて仕事ができます。もし上司が間違っていたら部下は自信をもって意見できます。著者はこれを「ひまわり型経営」と名付けました。ひまわり畑では大きい花も小さい花もすべての花が太陽の方向を向いているからです。

「経営理念」が行き渡っていないと自分のためだけに働いてしまいます。それでは給料や待遇の良い会社が他にあれば離れてしまいます。この会社で働きたいという満足感を与えるには、会社と社員の夢のベクトルを合わせることが大事だといいます。

 そんなコンパスの理念は「敬護」。「日本を幸せなリタイヤを迎えられる社会に変える」です。社員の中には両親を自分が管理する施設に入れることを夢見て働く方もいるといいます。

 世の企業の経営者は顧客や株主のことを考えて、ときに誰が会社を動かしているのかを忘れてしまう。著者のひまわりは、常に社員の方向を向いている。それが本来の会社のあるべき姿ではないでしょうか。

文=愛咲優詩