「欠点は直さなくていい」「TODOリストを手放す」…超高ストレス社会を生き抜くための『人生やらなくていいリスト』

暮らし

公開日:2018/5/3

『人生やらなくていいリスト(講談社+α文庫)』(四角大輔/講談社)

 幸せな人生とはなんだろう。楽しい毎日とはどんな日々だろう。その答えを持っていたとしても、果たしてそれは自分自身が心から望んだものだろうか。

 私たちは長い社会生活を通して「こうあるべき」という常識や決まりごとを身につける。それを大事に抱えて生きていれば、みんなから好かれて、少なくとも嫌われることなく生きていける。しかしそれは「他人が私に望むもの」であって、「私が自分に望むもの」じゃない。

 誰かが望む「やるべきこと」をやっていれば、その日は生きられるかもしれない。しかし自分が望む「やりたいこと」ができなければ、いつか苦しくなる。もう頑張りたくない。頑張れそうにない。もっと自由に生きたい。

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 こんなことを少しでも思ったことがある人に読んでほしい1冊がある。『人生やらなくていいリスト(講談社+α文庫)』(四角大輔/講談社)だ。本書は、絢香、Superfly、CHEMISTRY、平井堅などを担当した超売れっ子プロデューサーだった四角大輔さんが、私たちにもっと自由で気楽に生きる方法を説いている。40項目に及ぶ「人生でやらなくていいこと」を私たちに優しく語りかけているのだ。毎日頑張りすぎている人、なんだか疲れてしまった人は、この「やらなくていいこと」に手を出してしまっているのかもしれない。

■欠点は直さなくていい

 ひと昔前の日本では、同じものを大量に作って売るという生産の仕方が中心だったため、欠点の少ない「バランス人間」や「何でも屋」が人材として求められた。しかし時代は変わり、機能不全を起こしているシステムや形骸化したルーティーンを改善できる「斬新なアイデア」や「イノベーション」が、今は求められている。

 このために必要なのは「独創性」と唯一無二の「絶対個性」。つまり「得意」と「苦手」の掛け合わせで生まれる「オリジナリティ」だ。これからは、欠点を直すことより、良いところを伸ばすことに集中した方が絶対にいい。

「これこそが仕事も人生もうまくいく唯一の方法」と、四角さんは断言している。

■「TODOリスト」はなくていい

 仕事や煩わしい「やるべきこと」に追われ、「やりたいこと」をできずにいる人が多い。そんな人はまず「TODOリスト」に「やるべきこと」をすべて書き出してほしい。きっとものすごい数のリストが出来上がるはずだ。そのリストを、今度はこんな視点から眺めてほしい。

「この中で、やらないと人生が終わることっていくつある?」

 ただ、「忙しい」「タスクが無数にあって大変だ」と頭の中だけでパニックを起こしていないだろうか。改めて冷静にこのリストを見つめると、「絶対のTODO」はそれほどないことに気がつく。

 本来「TODOリスト」とは、「やりたいこと」を叶えるために生まれる存在だ。その「TODO」に振り回されて「やりたいこと」ができなければ本末転倒。だからこそ「やりたいことリスト」を書き出して、常にそのリストに向かって人生が突き進んでいるか確認しよう。

■できない自分でもいい

「オーバープロデュース」という言葉をご存じだろうか。プロデューサーが、アーティストの良いところではなく、弱点や苦手、ダメなところばかり言及し続け、「アーティスト性」の輝きを消してしまうことだ。

 これは現代の日本のあちこちで起きている。親が子どもに、上司が部下に、夫が妻に、本人らしさを尊重せず、会社の意向や自分の価値観を押し付けて強要する。なにより自分自身が自分に「こうあるべきだ」と強要して、本当の気持ちを押し殺す。

 私たちの本当の魅力は、型にはめたものではなく、ありのままの個性、つまりオリジナリティにあるはずだ。「やりたくもない、好きでもないこと」を続ける行為は「オーバープロデュース」であり、私たちの魅力を消してしまう。シンプルに自分らしさを追求し、それを最大限に表現する方法やその場所を見つけることに努力しよう。

■頑張りすぎたときこそ心の声に耳を傾けよう

 四角さんは子どもの頃から人と関わることが苦手だった。社会人になってもそれが続き、入社して2年間はいじめに遭い、それからもしばらく社内の評価は下の方。「売れっ子」からはあまりに遠い位置にいた四角さんが、30歳を超えて「あること」を実践し、仕事や人生がうまく回り始める。

 その「あること」とは、「自分にできること」。それだけに集中して生きたのだ。たったこれだけで売れっ子プロデューサーになり、今やその肩書を捨てて、新しいビジネスに取り組んでいる。

 本書で紹介されている「人生でやらなくていいこと」のすべての項目に共通していることは、「ありのままの自分を受け入れ、もっと心の声を聞こう」「その声に従って、やりたいことをしながら生きよう」ということだ。

 私たちは幸せになりたいために、楽しい日々を過ごしたいがために、色々なことを頑張りすぎてしまう。だが、その答えは意外とシンプルなものだ。もっと自分の内側を気にかけることなのだ。疲れたときや何かを投げ出したくなったときほど、自分の心の声に耳をすませてほしい。きっと本当の自分が本当にやりたいことを大声で叫んでいるはずだ。

文=いのうえゆきひろ