ドMな女上司とS顔部下の“ふしだら”グルメ漫画『まりこさんの恍惚ごはん』にムラムラが止まらない…!

アニメ・マンガ

2018/5/7

『まりこさんの恍惚ごはん』(酉川宇宙/白泉社)

「食事」は人生の喜びだ。多くのグルメ漫画は、いかにその食べ物が美味しそうか、絵やセリフ、モノローグ、表情などで表現する。「ああ、美味しそう」とよだれを垂らしながら読むことも多い。

 しかし、そんな期待を裏切るグルメ漫画がある。酉川宇宙氏が描く『まりこさんの恍惚ごはん』(白泉社)だ。

 主人公は、仕事はできるが周囲にも厳しく当たるため、28歳にして「お局マリ」と呼ばれる万里子。ワイシャツにパンツスタイルで色気も感じられない女性だ。そんな彼女に対して、いくら怒られても「ウィス」と悪びれないゆとり社員の部下、須佐町くん。

 そんな単なる上司部下の関係にみえる2人は、しかしある時間だけは主従関係が逆転する。それが食事の時間である。

 第1話は、終業後に2人で激辛ラーメン店に行く話なのだが、席に着くなり須佐町くんはお店で一番辛いラーメン(メニュー札には「死にます」の文字が)を大盛りで2人前注文。驚く彼女に、「え? 何スか?」と威圧的な須佐町くん。そんな彼の表情に、万里子は「も 申し訳ありません」と声をあげて謝る。

 最初このシーンを見たときは、なぜ部下の表情ひとつでこんなにも豹変してしまうのだろう、と不思議だったのだが、これにもちゃんと理由があった。詳しくは、彼女のドM気質が開花した小学校の頃の思い出を描いた第5話で(1巻に収録されている)。

 辛すぎるラーメンを食べるのに、水を飲ませることも許してくれない(と万里子が勝手に誤解しているだけなのだが)須佐町くん。辛いというより痛いと思いながらも、須佐町くんの指示でスープも全部飲み干す万里子。「マゾウマ!」と体をビクビクさせながら恍惚の表情を浮かべる彼女の姿に、正直読者は完全に置いてきぼりである。

 全く食欲を刺激されない(どちらかというと性欲を刺激される)グルメ漫画は初めてである。

 この作品は、単なる「美味しい」のその先にある悦びを描く。1週間彼からもらったスイカを塩もかけずに食べ続け、めまいや手の震えを感じながらご主人さまの命令(?)に忠実にあり続ける彼女の姿は、ドMの鑑。ただし、危険だから素人は絶対にマネしてはいけない。マネしてはいけないグルメ漫画ってなんだろう、と思うのだが、作品自体のやみつき度は高い。

 もはや彼女は、美味しいだけじゃ物足りない。読んでるうちに、こちらもただ美味しそうな描写だけでは物足りなくなってくる気がする。読者は新たな性癖の扉を開けてしまわないように注意しなければいけない一冊だ。

文=園田菜々