「制約」は問題解決のための足かせではない! ——制約を生かして成功を収めるためには…

ビジネス

公開日:2018/5/10

『逆転の生み出し方』(アダム・モーガン&マーク・バーデン:著、文響社編集部:訳/文響社)

 みなさんは制約があるために挑戦を断念したことがあるだろうか。おそらく、みなさんは本稿をご覧になっているから、「ある」との答えが多く返ってくるに違いない。もちろん私にだっていろいろな制約のためにあれこれあきらめてしまったことはたくさんある。

 ここでみなさんにひとつ考えてみてほしい。自分にとっての「制約→断念」という流れは、たいていのほかの人にとっても同様なのではないだろうか。すなわち、自分にできないことは他人にもできないことが多いのである。そうだとすれば、他人のできないようなことをできるようになれば、一見勝てそうになかった相手に対しても勝ち目が見えてくるはずだ。

 本稿でみなさんに紹介したいのが『逆転の生み出し方』(アダム・モーガン&マーク・バーデン:著、文響社編集部:訳/文響社)という本だ。本書は、制約がチャンスに変わるプロセスを解説し、これを実行に移すための理論書&実践書である。さっそくだが、本書の中身を少しだけ取り上げてみよう。

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■過去の成功を導き出した「習慣」の落とし穴とは?

 以前に成功をもたらしたやり方に従うことのメリットは、あらゆる精神的な処理を負担しなくてもすむということにあるのだそうだ。あらゆる精神的な処理には、たとえば、新たな課題に直面したときに、どのような新しいやり方を使おうかと思考回路をフル回転させる、こういった場合のストレスがあげられる。素早く課題を解決することが求められた場合に、手元に過去の成功例がたくさん積み上げられていれば、当然精神的な処理の負担を軽減するためにこれらが進んで用いられよう。

 しかしながら、このような成功体験に基づいた行動をとることで、さまざまな弊害も生まれて来ると本書は説いている。たとえば、習慣と反復のせいで、もはや適切とはいえなくなったものの見方や優先事項に固執してしまったり、直面している課題の解決にとってもっともよいとはいえないアプローチへと導かれてしまったりするのだそうだ。

■新しい成功を生み出すために制約を生かして「習慣」から解き放たれる

 それでは、このような習慣からわたしたちが抜け出すためにはどうしたらよいのかを、本書に即して考えてみよう。

 本書では、制約は新たな可能性へと向き合う手助けをしてくれるものだと説かれている。制約があることで、直面している課題に対する新たな視点というものが求められてくる。これまではあらゆる事象に対して効果抜群と考えられてきた方法に疑問を呈し、異議を唱え、まったく新しいやり方で何を始めるか考えさせられるのである。

 すなわち、制約はわたしたちに以下のようなことを促してくれるという。それは、

・生産性に対する問いかけをする
・見直しや再評価をする
・新しい解決策を手に入れる方法を考える

などである。

 このように制約は先に述べた数々の習慣から解き放たれるための起爆剤となっているのではないか。この起爆剤を有効に活用することで、過去の習慣あるいは反復から抜け出すことができる。そしてそれが真の意味でのイノベーションを促進することとなり、うまくゆけば「逆転」を生み出すことができるのである。

 ここまで、習慣にとらわれた際に生じる弊害と、そこから抜け出すための制約が秘める可能性について述べてきたが、残念ながらここで、本書の中身をすべて紹介することはできない。本書にはさらに、これまでに数々の有名企業が直面してきた課題とその解決方法が具体的に記されている。一見あたま打ちに思われる問題を鮮やかに解決した事例も多数見られた。

 本当のイノベーション、そして真の「逆転」を目指している方にはぜひ手に取っていただきたい1冊だ。

文=ムラカミ ハヤト