“面倒くさい”がカギになる。いま話題の「行動経済学」が私たちの人生を突き動かす!?

ビジネス

公開日:2018/5/10

『アリエリー教授の「行動経済学」入門』(ダン・アリエリー:著、NHK白熱教室制作チーム:訳/早川書房)

 人生は選択の連続だ。家や車などの大きな買い物、高校・大学の進路、就職活動での企業選び、といった人生を左右する大きな選択。それ以外にも今日のランチを食べるお店、今度の日曜日はどこに出かけるか、など小さな選択も。このような大小さまざまな選択のうえに私たちの人生は成り立っていると言える。

 ここで困ったことがひとつ。人は必ずしも合理的な決断ができないということだ。本来であれば、違う選択肢を選ぶべきなのに、無意識のうちに思い込みや思い違いで行動してしまう。そんな人間の思考パターンを「行動経済学」として研究し、講義・講演・執筆を行っているのがデューク大学教授のダン・アリエリー氏だ。

『アリエリー教授の「行動経済学」入門』(ダン・アリエリー:著、NHK白熱教室制作チーム:訳/早川書房)は、アリエリー教授がサンフランシスコで行った講義を収録したNHK Eテレ「お金と感情と意思決定の白熱教室~楽しい行動経済学の世界~」をわかりやすく書籍化したものだ。今回は、本書で紹介されている内容の一部を紹介したい。

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■あなたの行動を決定しているのは何の要素?

 初めて行ったレストランや居酒屋での話。とりあえず、何も考えずメニューの“店長おススメ”を頼んではいないだろうか。あるいは、「店員さんのおススメをください」とちょっとした無茶ぶり注文をしていないだろうか。なぜ、安易にそう決めてしまうのか、それは考えるのが面倒だからだ。

 この“面倒くさい”という気持ちが、意思決定において重要となる。例えば、月額500円の有料アプリを登録し、1カ月後に有料会員の更新が自動的に行われるものと、そうでないものがある場合、どのような結果になるだろう。自動更新されるアプリは、退会手続きが面倒だからと、たとえ使用していなくとも、ズルズルそのままにしてしまう人が多いはずだ。

 上記のように、月額500円の有料会員を続けるか否か、相手に求めるものが同じであっても、相手に選ばせる選択肢によって、“つい”参加してしまったり、“つい”買ってしまったりしてしまう。

■私たちのとても身近にある「行動経済学」という学問

 そして、これはアプリの月額会員という話にとどまらない。もっと広く、私たちは周囲のものから、知らず知らずのうちに影響を受けているということでもある。内閣の支持・不支持を問う世論調査であるはずなのに、質問の仕方ひとつで結果が違うこともある。また、「トイレをきれいに使ってください」ではなく、「いつもきれいに使っていただき、ありがとうございます」の張り紙の方が効果アリ、など、用例は数えきれないほどあるだろう。

 これらを「ふ~ん、そうなんだ」と済ましてしまうのは大変もったいない。自分の意思決定が何となく流されてしまったものなのか、それとも知ったうえで選んでいるものなのか、同じ結果であっても背景は異なるはずだ。

 また、人の行動に影響を与える「行動経済学」という学問について知識があれば、自分の仕事への向き合い方が変わるだろうし、人によっては恋愛テクニックとしても使えるだろう。かの孫子も「彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず」と言っている。本書を読み、人の行動について学んでみてはいかがだろう。

文=冴島友貴