「睡眠負債」は眠りの借金! 電車移動中の仮眠は効果ある? ある日突然倒れないために

暮らし

公開日:2018/5/10

『睡眠負債 “ちょっと寝不足”が命を縮める』(NHKスペシャル取材班/朝日新聞出版)

 残業、飲み会、家事、育児、勉強…私たちの身近に転がるたくさんの“睡眠不足”の原因。いつも生あくびがたえず、ランチタイムの後はことさらキツい。そんな、いつもなんとなく眠りが足りていないという状況を軽く見すぎていないだろうか。睡眠不足は生活の質を下げるばかりでなく、命を縮める重大な病のリスクを高めることということが研究で明らかになってきたという。

『睡眠負債 “ちょっと寝不足”が命を縮める』(NHKスペシャル取材班/朝日新聞出版)は、2017年6月に放送された特集番組「NHKスペシャル・睡眠負債が危ない~“ちょっと寝不足”が命を縮める~」をもとに、加筆して書籍化したものだ。番組の内容はすぐ大きな話題になり、放送以来さまざまなメディアに取り上げられ、「睡眠負債」という言葉は2017年の新語・流行語大賞でトップ10に選ばれたほどだ。日々の眠りが足りないことをなんとなく自覚している人たちに「これは、まずいぞ」と本格的に警鐘を鳴らすきっかけとなった。

■眠りに関する俗説や間違った情報に惑わされるな!

「睡眠負債」を抱えないためにはいったい何時間眠ればよいのか。睡眠評価研究機構代表の白川修一郎医学博士によると、年齢、性別、日中の活動量にもよるが、おおかた7時間から8時間というのが、最も健康被害が少ない時間だという。そして睡眠時間が5時間を切ってくるとどの人にもいろいろな危険が生じるらしい。今までは眠りの質がよければ量・時間はあまり問題にならないとされてきたが、それは睡眠の量、つまり時間が充分確保されていることが前提のこと。質がよいから時間は短くてよいということではなく、必要な時間が確保できなければ、心身に問題が起きる可能性は高くなる。睡眠不足で仕事の効率が落ちることによる我が国の経済損失はなんと15兆円ほどにもなるという報告がある。また、命にかかわるような重大な病、たとえばがんや認知症につながるリスクも高まるというのだ。

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■正しい知識で、睡眠に関する疑問を全て解決!

 本書の後半では、睡眠に対する76の疑問がQ&A方式で紹介されている。

Q.体を横にしていても、睡眠時間にならないのでしょうか。

A.なりません。

 眠りに落ちなくても体を横たえている方がよいと思っていなかっただろうか。本書ではそのほかの質問についても答えに加えてその理由をわかりやすく解説している。一部を紹介すると――。

Q.寝溜めは効果がないのでしょうか。気分のリフレッシュにはなると思いますが。
Q.寝不足は電車、自動車移動中での仮眠で補えますか。
Q.二度寝の効果について教えてください。

 誰もが気になるこれらの答えや解説については、ぜひ本書で確認してほしい。今まで睡眠に対して持っていた固定観念が覆されるような新しい発見もあることだろう。

 睡眠について、「質」に比べてあまり重要視されて来なかった「量・時間」。「睡眠負債」という概念を理解することで、しっかり眠ることの大切さを再認識し、自らの生活を見つめなおす機会にしてほしい。

 限られた時間の中で充分な睡眠を確保することは、現代を生きる私たちが背負う大きな課題なのだ。

文=銀 璃子