フリーランス、40歳の壁。「干される人」と「稼ぎ続けられる人」

ビジネス

2018/5/12

『フリーランス、40歳の壁――自由業者は、どうして40歳から仕事が減るのか?』(竹熊健太郎/ダイヤモンド社)

 リリー・フランキー、大槻ケンヂ、みうらじゅんなど錚々たるメンツが鬱病を患っていた、という衝撃的なインタビュー集『サブカル・スーパースター鬱伝』(吉田豪)のキャッチコピーに「サブカルは40歳を超えると鬱になる」というものがあった。コレに反応したのがライターにして大学教授なども歴任し、現在はマンガサイト「電脳マヴォ」を運営する才人・竹熊健太郎。彼は「サブカルというより、自由業は40歳を超えると鬱になる」とツイート。続いてそうなる理由をブログやツイッターで語ってきたが、大きな反響があった。その内容をもとに編纂されたのが『フリーランス、40歳の壁』(竹熊健太郎/ダイヤモンド社)だ。

 自由業と言ってもフリーランスの編集者やライター、カメラマンから弁護士、スポーツ選手まで多様だが、本書では自由業を「著述作家業を中心とした表現業者」と規定。そしてアラフォーとなった頃に多くのフリーランスが壁にぶち当たり、フェードアウトする者も増えてくる理由として“同じ仕事ばかりが舞い込み嫌気がさす”というマンネリズムとの戦い、そして“仕事をする編集者が自分より年下になってくる”ことを挙げている。

 仕事を選んだせいで干されるのは自業自得なのだが、深刻なのは後者の年齢問題だ。確かに若いフリーランスが次々と供給される中、自分より年上、下手したら編集長や会社の上役と同年代のフリーなんて、編集者側からしたら使いにくくてしょうがない。こうなると、よほどの強みがない限り、仕事は必然的に減っていくことになる。人によっては、ここで鬱などの精神疾患を発症していくこともある、という。

■壁を乗り越える方法はある?

 本書には、竹熊自身の体験に加えて、40歳の壁を乗り越えたフリーランスたちのインタビューも。ゲーム『ポケットモンスター』の大ヒットに湧くゲーム会社を、あえて蹴ってフリーとなったとみさわ昭仁、マンガ家とサラリーマン、二足のわらじを履き続けるも40代で鬱に苦しんだ田中圭一、大学時代からミニコミ運営で頭角を現すも、麻雀にのめり込みすぎて設立した会社を追い出された杉森昌武、実写映画業界からドロップアウトし、地方で超廉価アニメ制作に活路を求めたFROGMANなど、40歳前後に転機を迎え、それをどう乗り越えたかが語られる。

 一方で、早くからフリーの編集者、ライター、カメラマンとして活躍し、「壁なんてなかった」と語るのが、編集者、ライター、カメラマンとマルチに活躍する都築響一。都築のように、自由に生き続けられる可能性があるのもフリーランス稼業の魅力ではあるのだが、同じ道を歩ける人はそういない。大抵は、みんなどこかで壁に当たるのだ。全9章を使い壁が訪れる理由、その乗り越え方、実際に乗り越えた体験談が語られるが、残酷な言い方をすれば、こうしたアドバイスを“40の壁にぶち当たってから”読んでも、おそらくは手遅れだ。

 若い頃に何某かの実績を築けなければそもそもフリーとして生き続けていくことはツラいし、その上で「困った時には昔の仲間に助けてもらえ」という、コネ、人脈の重要性も語られる。そう、いざ困った時に、過去の実績やコネや助けてくれる友人がいなければ、そこでほぼ詰みなのだ。

 第9章では「フリーランスの上がりとしての創業社長」も語られており、普通のサラリーマンにはなれなかった「フリーにならざるを得ない人」でも、社長業ならできる、とも。確かに自ら社長となれば好きなことを仕事にできるが、今度はそれをマネタイズする才能や努力も求められるし、ここでだって助けてくれる仲間や過去の実績は必要だ。やはり、40を超えて困ってからでは遅い。

 本書は40代、50代の、竹熊と同年代のフリーランス仲間に向けて書かれたものだろうが、むしろ読むべきは20代から30代前半の若手だろう。10年後、20年後に、自分が進む道の先にはどのような“壁”が立ちふさがっているのかを知り、その壁を乗り越えるためのヒントを予め知っておく。そして武器となる実績や人脈を、早くから積み上げておく必要がある。

 すでに40を超え、まさしく壁の前でもがくフリーライターである筆者にしても、本書は思い当たることが多すぎる。そして高く分厚い壁の前で、自分が使える武器はあとどれだけあるだろうか、と青ざめながら確認している最中なのである。

文=佐藤圭亮