川の流れのように『AKB48』を企てる。時代の仕掛け人、秋元康流「脱情報化力」

Fujii_Kaoru

2012/3/6

企画脳

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : PHP研究所
ジャンル: 購入元:電子文庫パブリ
著者名:秋元康 価格:540円

※最新の価格はストアでご確認ください。

国語、算数、理科、企画…。
社会に入った途端、社会人の必須科目は、
社会から「企画」に変わる。

イケてる企画作りに四苦八苦する
イケない企画マン(私;)は
情報とマーケティングとITを駆使した、
国語と算数と理科の仕込みに四苦八苦。

それを冷ややかに見つめる秋元氏がひと言。
「それはあまり意味がないですね。。。」

『ザ・ベストテン』『オールナイトフジ』『夕やけニャンニャン』などのヒット番組企画から、『なんてったってアイドル(小泉今日子)』『本田美奈子「1986のマリリン」』『川の流れのように(美空ひばり)』『海雪(ジェロ)』などの幅広いヒット楽曲。

そして、『AKB48』の国民的大ヒット。。。

AKB48のおやじファンにならずとも、私たち40代の青春の底流には、秋元氏が仕掛けた企画の数々が脈々と流れている。
そんな時代や世代、最近では国境を超え、ヒットメーカーであり続ける源流に迫りたい。

そんな想いで、対談記事を企画し、インタビューに臨んだのは2010年春。

秋元氏の作品集(情報=国語)を読みこみ、AKBのイベント(市場=算数)にお邪魔し、理路整然の準備(技術=理科)で伺った。

その中で氏が語ったのが冒頭の回答だ。
私:「ビジネスマンは目的と生産性を考え、情報収集するようトレーニングされています」
氏:「それはあまり意味がないですね。みんなそうしているので、そこに差異は出ません」

・情報を集めれば集めるほど、最大公約数しか示さなくなってしまう
・情報化が進むと、その弊害として「中庸」「予定調和」のものが増えてくる
・みんなが情報と思っていないことのほうが、じつは情報としての価値は高い
・どれだけリサーチしようが、地図を見ようが、間違えるときは間違える
・だとしたらどちらかの道に行ってしまった方が早い。それも全力で
・間違ったと思ったら戻る。その戻る力が、実は足腰を鍛える

嗚呼、耳が痛い。
TechCrunchなどのITブログで最新ウェブビジネスの潮流を捉まえた、
と悦に入っている、そこの予定調和・実践遅行型の企画マン(私;)こそ、
時代の源流をまったく捉えられない、と暗喩的痛撃をくらったのだった。

秋元氏のヒット企画の源流は、
『川の流れのように』蛇行し、決して平均化しない。

「脱・情報収集過多」、「脱・平均化」したい企画マン、必読必践である。


冒頭、『海雪』(ジェロ)の作詞ストーリーに瞠目される。「あなた追って出雲崎♪ 悲しみの日本海♪」。メモを取るでもなく、自分が面白いなと思った記憶の数々が、どのように結ばれて結晶化していゆくのか。発想や企画とは、素材を集め編む、「編・集」の別称でもあるのだと思う

AKB48のコンセプト「会いに行けるアイドル」は、今でこそ称賛者が多いが、規模の生産性、会場リスクなど、大手代理店的マーケティングからすれば常軌を逸した選択。自分の勘は正しいと信じているとはいえ、会場に数人のファンしか入らない当初の低調をどう受け止められるかが、蛮勇企画マン秋元さんの本当の凄さである。脱予定調和の道は、傷だらけのケモノ道である

企画の「企」の会意は、「人が足先でつまだちする」。企画の「画」は、「筆を手にもち+田のまわりを線で区切って囲んださま」。つま先立って感じた時代を、人と違うところに区切った区画に引き込む(種をまく)のが、秋元さんの企画だ。時代を移す。時代を映す。秋元さんの”つま先”と”区切り”は、時代を感じ、移せる空器(うつわ=くうき)なのだ