「人前でのスピーチ…絶対無理!」この1冊であがり症の悩みとお別れ

ビジネス

公開日:2018/5/15

『人前で“あがらない”話し方』(鳥谷朝代/三笠書房)

 小学生の頃、「もう少し大きな声で教科書を読んでください」と先生に言われたこと(そしてそのせいで同級生に笑われたこと)、人前で話すとき、緊張のあまり自分が何を言っているのかわからなくなって暗澹たる気持ちになったことはありませんか。筆者はかつてのイヤな経験が頭をよぎり、すっかり人前で話をするのが苦手になってしまいました。

『人前で“あがらない”話し方』(鳥谷朝代/三笠書房)は、人前で話をするとき声が震えてしまう、緊張して頭が真っ白になってしまう、そんな方におすすめしたい1冊です。

 著者の鳥谷さんは、ご自身も人前でまったく話せなかった「暗黒期」をお持ちの元・あがり症。しかしたまたま目に入った話し方に関する講座を受講し、スピーチの実習を繰り返したことで、あがり症を克服し、今では同様の悩みを持つ人たちに向けた講演活動を年間200回以上行っています。本著は、そんな彼女によるあがり症改善のためのノウハウをまとめています。

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 鳥谷さんは、あがる要因のひとつとして、「準備不足」をあげています。しかしここで言う準備とは、話したいことをすべて原稿にして、丸暗記をすることではありません。

 大切なのは話したいことを短くまとめること。たとえばあなたに、大勢の前でスピーチをする機会があったとします。緊張しますよね。できれば恥をかかずにその時間を終えたいですよね。でも、そのスピーチの最終的な目的はいったい何なのか、ちょっと考えてみましょう。暗記した原稿を相手に読み上げることではなく、相手に自分の言いたいことを伝えることであるはずです。

 丸暗記した文章より、(多少たどたどしくても)自分自身の感情をこめて話す方が、格段に相手に強い印象が残ります。はじめから完璧を目指すのでなく、まずは「導入」「本題」「結び」、この三段構成をベースに、話したいことを組み立てていきましょう。

 しかしせっかく準備をしてきても、どうしても声が震える、つまる、という方もいるでしょう。そういう方は、文字通り「身体」があがりやすくなっているかもしれません。緊張しているとき、人は目に見えて肩や背中が強ばっていたり、姿勢が丸まって大きな声が出しにくくなっていたり、目線が下がっているとのこと。さらに緊張すると、呼吸も速く浅くなり、さらに震えがちな声になってしまいます。

 これを防ぐには、ストレッチで硬くなった筋肉をほぐすこと、腹式呼吸で身体の隅々まで空気をためこむことが大切です。本著では、簡単にできるストレッチとして「3首ユルユル体操」を紹介しています。3首とは、首、手首、足首のこと。これをゆっくりと回していくと、自然と強ばっていた状態がリラックスしていきます。また、腹式呼吸の方法も簡単に紹介しましょう。おへその少し下あたりに手を当て、その部分を内側に凹ませながら、口から息をすべて吐ききり、鼻から息を吸ってお腹を膨らませる、この繰り返しです。お腹を意識して呼吸をすると、胸や肩の筋肉がリラックスした状態になるので、声が出やすくなります。

 本著にはさらに、結婚式のスピーチや、普段の電話対応など、シチュエーションに応じた対策も記されています。苦手な場面を中心に、改善策を知るのもいいかもしれません。

 私が特に気をつけたいと思ったのは、「スピーチが苦手な人は、必要もないのについ言い訳を口にしてしまうが、そのような話し方では、聞いている方もなんだかソンをしている気分になってしまう」という指摘でした。

「何も準備していなかったので、うまく話せませんが…」「つたない話で申し訳ありませんでした」、不安になると、つい後ろ向きな言葉でその場を紛らわせることが、自分を省みるとよくあったのです。

 話している本人からしてみれば、恥ずかしさといたたまれなさからの発言なのですが、確かに聞いている側を不安にさせる話し方です。話すときのクセになっているようで、一朝一夕に改めることは難しいですが、まずは意識的にそういった言葉を避けることで、自信を持って話せる(話しているようにみえる)でしょう。

 ビジネスなどの機会で、人前で話すときには、「プレゼンを成功させたい」「いい印象をもってほしい」など、結果を求められるプレッシャーがあります。しかし、緊張するのは当たり前、失敗は次に向けた改善点ととらえて臨むことで、今よりも堂々と、自信を持った話し方が身に付くはずです。

文=音田アユム