モノを売るヒントはアタマの中にある! “お客さま”を理解するカギになるのは?

ビジネス

2018/5/16

『お客さまには「うれしさ」を売りなさい』(佐藤義典/青春出版社)

 お客さまの立場に立って考える――。アルバイトでも社会人でも、仕事で言われることがある言葉だろう。なかには聞きすぎて「そんなの当たり前だ!」と思っている人もいるかもしれない。特に、直接消費者にサービスを提供する「B to C」の会社であれば、自分もまた同じ消費者のひとりであるから、その気持ちを考えるのは簡単だと思いがちだ。しかし、本書『お客さまには「うれしさ」を売りなさい』(佐藤義典/青春出版社)は、「買い手(お客さま)にとっては当たり前のことが、売り手になるとまったくわからなくなる」と警告する。それは、「モノが売れる」という現象の背後に、実にさまざまな要素が絡み合っているからだ。「カンと経験」も捨てたものではないが、マーケティング理論によってそれを補うことで、施策の成功率はグッと高まるはずだ。

■お客さまは「うれしさ」にお金を払っている。そのうれしさの価値は?

 本書のタイトルにも入っている「うれしさ」。著者は、この「お客さまのうれしさ」を考えることが、マーケティングにおいて一番大切だという。私たちがモノを買うとき、それは単にその商品やサービスを手に入れているのではなく、それによる「うれしさ(=価値、ベネフィット)」を得ている。例えば、あなたがハーゲンダッツのアイスクリームにお金を払うとき、あなたはアイスという物体ではなく、そのおいしさで得る至福の時間や、プレゼントする相手の笑顔という価値を買っているのだ。つまり、お客さまにとっての商品やサービスは、「うれしさ」を手に入れるための手段だといえる。この「うれしさ」を基準にすると、売り手がつい見落としがちなポイントが見えてくる。

■モノが似ているから競合するのではない。真のライバルは――

 そのひとつが「競合」の考え方だ。ある業界で仕事をしていると、ライバル会社の似ている商品にばかり気をとられてしまうが、「競合」は必ずしもそれだけではないという。本書では、競合を「お客さまのアタマに浮かぶ選択肢」だと定義し、その商品が提供する「うれしさ」が同じならば競合になりうるという。

 再びハーゲンダッツのアイスを例に考えてみよう。この競合を考えるとき、売り手の視点で真っ先に浮かぶのは、高級価格帯のアイスクリームだろう。しかし、「ハーゲンダッツを買うとき、アタマの中にはどんな選択肢があるのか?」を買い手視点で考えてみてほしい。そのときお客さまが「仕事で頑張った自分へのご褒美」を求めているとしたら、選択肢には高級アイスクリームだけでなく、同じくらいの値段のケーキや果物も含まれているはずだ。もしご褒美として想像するものがスイーツだけでない場合には、この範囲にとどまらないだろう。ということは、「仕事で頑張った自分へのご褒美」としてハーゲンダッツを売りたいと考えているとき、アイスクリームの市場だけを見ていては、有効な施策が打てないのだ。

 本書では、この他にも、「顧客をどう分類するか」「自社の強みをどう作るか」「それをどう伝えるか」といった基本的なマーケティングの考え方について、私たちの日常生活に即した「うれしさ」の視点から解説している。この視点を取り入れることで、企業や売り手としての感覚だけでは想像しきれない、本当の“お客さまの立場”に近づくことができるはずだ。

文=中川 凌