「お客様が決めるんだ!」 最速で最高の結果を出し続けるアマゾン式経営術

ビジネス

公開日:2018/5/16

『アマゾンのすごいルール』(佐藤将之/宝島社)

 ネット通販最大手のAmazon。「Amazonを一番よく利用する顧客はAmazon社員である」といわれる。そんなAmazonに心酔する社員は自分たちをアマゾニアンと自称するそうだ。そうまで社員に愛されるAmazonの経営にはどんな秘密があるのか。

『アマゾンのすごいルール』(佐藤将之/宝島社)は、アマゾン・ジャパンの立ち上げメンバーである著者が、Amazon式の経営術を紹介している。最速で最高の結果を導き出しているAmazonの根幹は、「Customers Rule!(お客様が決めるんだ!)」の一言に集約できる“お客様第一主義”にあるという。

 アメリカを始め日本やヨーロッパ市場で業界トップを走り続けるAmazonの内部に迫った。

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■F1のごときスピード感

 Amazonの組織構造は、シンプルな縦割り構造をしている。各国の支社の上にアメリカの本社があり、広報、人事、財務、法務などの各部門を一括に管理しているのだ。この縦割り構造によって承認を通さなければならない決裁責任者が少なく、よりスピーディな決断が行えるという。

 著者も、5000万円のプロジェクトを本社のSVP(部門長)に直接交渉して即日承認を受けた経験があり、10億円規模の決裁が2日で承認された例もあるという。ひとりの責任者にそれだけの裁量が与えられているのがまず驚きだ。

 アマゾン・ジャパンの社長ジェフ・ハヤシダは、自社を「F1を走らせながら修理して、しかもチューンナップする会社」と評する。Amazonのサイトは利用者が使いやすいように、目当ての商品を見つけられるように年間で何万回というアップデートを行っている。お客様のために最高速度で改善を続けるスピード感が急成長のカギなのだ。

■Amazonの掲げる至上命題

 Amazonには全世界共通で取り組む「グローバル・ミッション」が2つある。

 ひとつは「Customer Experience(顧客満足)」。Amazonのサービスを利用することで「ハッピー」、「楽しい」と思えることを目指している。新規プロジェクトを立ち上げるときも、まずは「お客様が喜ぶか?」を念頭に考える。大幅なコスト削減になっても品物が遅れるような計画では絶対に承認は下りないというから信頼できる。

 ふたつ目が、地球上で最も豊富な品揃えを目指す「Selection(品揃え)」だ。書籍販売から始まり、いまでは百貨店やスーパー、ホームセンター、家電量販店よりも豊富な品数を揃えている。選べるのは商品だけでなく支払い方法も含まれる。

 例えば、商品の配達時に代金と引き換える「代引き払い」は、著者が本社に掛け合って2001年に実現したAmazon初の試みだった。当時、関西方面とくに大阪では「物が届く前にお金を取られるのはおかしい」という感覚が根強く、そうしたお客様の声を考慮して「代引き払い」を取り入れたという。

 Amazonが「グローバル・ミッション」にこだわる理由について、創業者ジェフ・ベゾスがこう答えている。

「だって世界中どの国の人でも、選択肢が少ないより多い方が好きでしょう!」

 確かにその通りだが、普通はそれだけの理由でここまでやるだろうか。このスケールの大きさがAmazonを巨大企業たらしめる要因なのかもしれない。

 本書は、こうした基本理念の他にもAmazonのビジネスモデル、人事採用や人事評価の仕方、リーダーシップの育成など、AmazonをAmazonたらしめる経営術を事細かに解説している。

 気づけば私もいつもAmazonで本を買っている。自分もいつの間にかアマゾニアンになってしまっていたようだ。

文=愛咲優詩