アメリカには「うんこのドナー」なるものがある!? “リキまないでお勉強”できる、子どもも大人も楽しめる『うんこ図鑑』

暮らし

2018/5/24

『うんこ図鑑』(荒俣宏:監修/日本図書センター)

 昨年、『うんこ漢字ドリル』が大ヒットした。ドリルのありとあらゆるページに「うんこ」がちりばめられ、それを面白がった全国の子どもが「うんこ先生」と共に楽しく漢字の勉強をしたのだ。この事態に「私たちの努力はなんだったんだ?」と涙を流した本物の先生もいるかもしれない。

 苦手な勉強も、うんことセットにしてしまえば子どもは案外頑張れる。頭の固い大人には意外な盲点だったに違いない。そんな折に登場したのが、『うんこ図鑑』(荒俣宏:監修/日本図書センター)だ。こちらは『うんこ漢字ドリル』のように、「うんこと一緒に何かを学ぶ」1冊ではない。「うんこそのもの」をあらゆる角度から解説し、楽しく学べる図鑑なのだ!……これまた盲点な書籍が出版されてしまった。果たしてどんな内容なのだろうか。

■意外と知的なコンテンツが満載

 うんこという存在や印象から察するにいささか心配が募る本書だが、ページをめくると意外にしっかりした作りで驚いてしまう。どこかほっこりさせてくれるイラストと、ユーモアあふれる文章で構成されていて、悪ふざけ感がまったくない。確かにこれは「うんこの図鑑」だ。

 図鑑の醍醐味といえば、やはり「比較」だ。虫や植物、乗り物など、最近の図鑑では対象物を比べて分析するのが当たり前。もちろん本書でもうんこを見事に比較している。

 たとえば、大きなイラストと共にたくさんの生き物が登場する「くらべてみよう」のページ。ここではニンゲンを含めたさまざまな生き物のうんこを「大きさ・色・カタチ」「食べてから出るまでの時間」「ニオイ」など、テーマ別に比較して見せている。うんこを体系的にとらえることができるのだ。……うんこを体系的にとらえるって……いや、なんでもない。

 本書ではうんこの大きさを分かりやすく比較するため、大きい順に生き物が並んでいる。その並びを見ると……ニンゲンはライオンの手前にいるじゃないか! あの百獣の王ライオンより、ニンゲンのうんこのほうが大きいのだ! ちょっと嬉しいなぁ。ほかにも、イヌとサルの間にカエルの仲間がいたり、キリンのうんこがめちゃくちゃ小さかったりと、意外な発見が散りばめられている。この事実に、動物の生態に興味がわく子どもが出てくるかもしれない。

『うんこ図鑑』p14-15より

■大人も楽しめる雑学がフンだんにつまっている!

 また、こうして比較された動物たちのうんこは、以降のページでより深く知識を掘り下げる構成になっている。

 たとえば、ライオンは肉食獣の中でもめちゃくちゃクサいうんこを出す。ところがこのクサいうんこ、なんと列車事故の防止に役立つというのだ。ライオンのうんこのニオイは、シカなどの草食動物にとって天敵のニオイでもあり、それを嗅いだだけで逃げていってしまう。そこで、シカと列車がぶつかる事故に悩まされていた外国の鉄道会社が、線路のまわりにライオンのうんこをまいてみた。すると効果はてきめん! シカが近づかなくなり、事故が減ったという。これは強烈な話だ。

 一方、ニンゲンのうんこも負けてはいない。臓器や血液などを患者に分ける人のことを「ドナー」と呼ぶのだが、なんと「うんこのドナー」なるものがあるらしい。腸内環境に疾患を抱える人のおなかに、健康な人のうんこを入れる医療があるのだ。アメリカでは「骨髄バンク」ならぬ「糞便バンク」が存在するというので、うんこも案外捨てたものではないと感心してしまう。

「うんこの図鑑」と聞くと、よほどのキワモノか子どもっぽい内容のものを連想してしまうが、このように本書では大人が読んでも楽しい雑学がふんだんにつまっている。家族や友達の話題に困ったときのコミュニケーションツールになる……かもしれない。(TPOに要注意だ!)

『うんこ図鑑』p42-43より

■読書のおもしろさを体験する「はじめの1冊」に

 子どもは元々自分の好きなこと、興味のあることならどんどん吸収する力を備えている。本来「学び」は、大人が押し付けるものではなく、自発的に行われることだ。

 それは読書に関しても一緒で、大人に「本を読め」と言われても面白くなければ読まないし、それが身の丈に合わない高尚な文学だったときには苦痛な体験になってしまうことだってある。その点この本は、ただただ「笑える!」「面白い!」「だれかに話したい!」というモチベーションでどんどん読み進んでしまう。読み終えたころには、「読書って面白い」という体験や、「1冊を読み終えた」という達成感を覚えるだろう。きっとそれが、他にも色々な本を読んでみたいという気持ちにつながるはずだ。

「なにかを並べて比べてみる」「気になったところをもっと知ろうとする」「インプットした知識を定着させる」。本書にはこういった「学びのキホン型」がちりばめられており、子どもが初めて一人で本格的に読む読書として、「はじめの1冊」にぴったりだ。「リキまないでお勉強!」というキャッチフレーズは悪い冗談ではなく、うんこを通して子どもの将来を思う深い意味がこめられているのかもしれない。

文=いのうえゆきひろ