ビットコインの“なるほど”のしくみ ハイテクのすごい技術

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公開日:2018/5/29

 我々がよく利用・活用している「便利なしくみ」には、それぞれに「便利さの理由」がある。しかし我々は、その“なるほど”のしくみをよくわからないままでいることが多い。この春刊行された『雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科』(KADOKAWA)は、我々の生活に浸透している、あるいは普及しつつある「モノ・しくみ」について、それに関する“すごい技術”を図解で紹介する一冊だ。


 今回の記事では、最近なにかと話題になることが多い「ビットコイン」について、そもそもこの「仮想通過」のしくみはどういったものなのか、いくつかの図版を交えながらわかりやすく説明しよう。

■「ビットコイン」とはそもそも何なのか?

「ビットコイン」は2008年、サトシ・ナカモトと名乗る謎のプログラマーがネットに公開した論文が出発点となる。目的を「国家から独立した通貨を作ること」とし、その考え方に賛同した世界中のプログラマーが作り上げたのがビットコインだった。

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 ビットコインを得るには、通常「取引所」と呼ばれるインターネット上のサイトにアクセスし、専用の電子財布「ウォレット」を作成する。手続きは銀行のウェブ口座を作るのに似ていて、使い方はいたって簡単。スマートフォンなどでSUICA(スイカ)のような電子マネーとして利用すればよい。

イラスト:小林哲也

 ただし、利用法は似ていても、ビットコインのしくみは既存の銀行システムとは大きく異なる。銀行ではセンターにサーバーを設置し、取引記録を一括管理するが、ビットコインは取引記録をインターネットで共有し合うのだ。

イラスト:小林哲也

 そのしくみを支えているのが「ブロックチェーン」と呼ばれるアルゴリズム(問題を解くための計算手順)だ。取引記録をブロックに格納し、時系列順につなげてインターネット上のコンピューターで共有する。こうすることで、データの改ざんは極めて困難になり、共有処理のおかげでシステム障害も起こりにくい。

イラスト:小林哲也

 面白いのは、ビットコインの管理方法だ。国家が管理する通貨は、その意に従って通貨の量が増減される。それに対してビットコインは、公開されたアルゴリズムの中で通貨量が決められている。ブロックチェーンを作成する「マイナー(採掘者)」への報酬として、決められた分だけ発行されるのだ。そこに管理者の勝手な思惑が入り込む余地はない。

 ビットコインのしくみは、センターに高価なサーバーを置く既存の銀行には大きな脅威だ。もしビットコインが普及すれば、高価なサーバーを管理維持しなければならない現在の銀行システムは淘汰されてしまう。

 ビットコインは金融革命をもたらす可能性を秘めている。ブロックチェーンのしくみを使った通貨を一般的に「仮想通貨」というが、今後さまざまな仮想通貨が多様な分野で現れると予想されている。

『雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科』
涌井良幸・涌井貞美/KADOKAWA

コドモもオトナもタメになる「モノのしくみ」の話――身近にある「便利なモノ」には、それぞれに「便利さの理由」があるが、我々自身、それをよく知らぬままに日々生活している。本書は、家電からハイテク機器、文房具まで、日ごろよく目にしているモノを下支えする“すごい技術”を、イラスト図版とともに解説する一冊!