不幸っぽいけどなんか楽しそう!? 婚活中アラサー女子のシュールでゆるい日常

アニメ・マンガ

2018/5/27

『幸子、生きてます』(講談社)

「婚活」や「恋活」のリアルイベントやアプリ、ウェブ記事、テレビ番組……世の中にはたくさんの恋愛コンテンツが溢れている。私は今年27歳でアラサー女子と呼ばれる年齢になったわけだが、だんだんと結婚する友人が増えてきて、身内からもそれとなく「いい人はいないの?」と聞かれるようになってきた。自分にする気があるないにかかわらず、「結婚」という二文字を意識せざるを得ない時期に突入してしまったのだろう。

 独身とか、婚活中とか、どうしても「結婚できていない」というネガティブなイメージがまとわりつく現代において、そういったテーマを扱う漫画は愚痴っぽい描写が入ってしまうのは仕方がないのかもしれない。しかし、独身の人間にとって、もう少し心が癒されるアラサー漫画はないものか。

『幸子、生きてます』(講談社)は、そんなささくれだちやすいアラサーの人間にとってピッタリのギャグ漫画だ。作者は『野田ともうします。』の作者・柘植文。タイトルも、猫背で不幸そうな幸子が立っているだけの表紙も、とにかく全体からの幸薄感がすごい。

 事実、幸子は33歳独身で市役所勤め、婚活パーティーで出会った男性に買わされた欠陥マンションに住んでいるという、救いようがないほどに幸が薄い女性だ。しかし、この作品の面白いところは、そんな幸子の日常には全く悲壮感がないところにある。

 欠陥住宅の床のかたむきを利用してお団子を丸めたり、イケメンの孫がいることを知ったことで老夫婦がやっているタンゴ教室に通い始めたり、独身の友達とイブの夜にお酒を飲みながらジグソーパズルを埋めたり、婚活中ではあるものの特に焦りも苛立ちもない幸子の姿にほのぼのとしてしまう。

 婚活中というとどうしても結婚がゴールになってしまって「結婚していない今は幸せではない」と思ってしまいがちだけど、そんなことはないのだ。結婚もしたいけど、結婚していない今も十分に楽しくて幸せ。幸子を見ているとそんな当然のことに気づいてしまう。

 どこかつかみどころのない幸子のゆるっとした日々。どこを見ても「結婚が正義」みたいな世界に疲れたときに、必ず心をじわっと癒してくれる一冊である。

文=園田菜々