“他人との異なる価値観”を楽しむ工夫が散りばめられたコミックエッセイ

アニメ・マンガ

2018/5/26

『人は他人 異なる思考を楽しむ工夫』(さわぐちけいすけ/KADOKAWA)

 いうまでもなく、世の中に存在する99%以上の人は“他人”だ。他人とのつきあい方は、誰しもが一度は悩まされるテーマ。シンプルな問題だからこそ、難しいともいえる。

 そんな「他人同士が仲良くする秘訣とは…?」というテーマに臨んでいるのが、コミックエッセイ『人は他人 異なる思考を楽しむ工夫』(さわぐちけいすけ/KADOKAWA)。「夫婦が仲良くする秘訣」を描いたコミックエッセイ『妻は他人 だから夫婦は面白い』がヒットし、Twitterフォロワー数15万人超という著者だけに、第2弾を待ちかねていた方も多いだろう。

 本書はダ・ヴィンチニュースで連載されていた「人は他人 異なるからこそ面白い」に、70ページ以上の描き下ろしを加えて単行本化したもの。などといわれれば、読む前からちょっと構えてしまうかもしれない。

 でも、安心して欲しい。最初のテーマ「もののいいよう」は、洗い残しがあった食器にまつわる、夫婦の他愛もない会話から始まる。何やら一気に肩の力が抜けてしまう、不思議なふわふわ感。そこには、微笑みながら「うん、そうだね」と頷く自分がいた。

 得てしてこのテの“交際術”を扱う本は、説教じみたテイストになりがちだ。作者にその意識がなくても、読み手はそう受け取ってしまう。著者と読者が、既に“交際術”という術中にハマッているわけだ。

 その点、本書にはそうした気負いがまったく感じられない。コミックエッセイらしく、あくまで飄々と、時にクスッと笑わされたりもしながら、親近感とともに読み進められる。

 もちろん、人づきあいのポイントはきちんと主張している。何気ない日常生活が描かれる中で、言うべきことは言うよ、と。憎めない著者夫婦を通して、メッセージはしっかりと伝わってくる。

 その担い手は、マイペースな夫(著者)と、淡々としているようで実は鋭く、しっかり者の妻。両者の対比もおもしろく、読んでいて飽きさせない。やがて、この素晴らしい奥様がいてこその夫婦円満だなぁ…などと、他人の家庭を覗き見している感覚すら覚えてしまう。

 そうした感覚を持たせるところが、他人との接し方を客観的に捉え、「おー」「へー」「ほー」と実感させる秘密になっているのかもしれない。実に不思議な世界観だ。

「喧嘩になりやすい言い方」「不快感が相手に届いてしまう言い方」「相手が嬉しくなる褒め方」「変わって欲しい時、相手も(自分に)変わって欲しがっている」など、本書が指摘するポイントは数多い。

 そこに共通する意味合いは、「仲良くしたい人や好きな人が異なる考えだった時に、それを楽しむ工夫」だという。決して、「苦手な人や嫌いな人と仲良くする方法」ではないのだ。

 なるほど、それなら無理がない。「無理すんなよ」と、肩を叩かれている自分の姿が思い浮かぶ。ついつい無理をして、不安のループに陥りがちな方は、本書で肩の力を抜いてみよう。視点を変えるきっかけが、何かしら見えてくるに違いない。

文=藤井淳