「外野は気にせず、自分のための選択をせよ!」ある意味、生き方の断捨離!?【ハードボイルド自己啓発書】

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2018/5/30

『その「決断」がすべてを解決する』(大浦千鶴子:訳/三笠書房)

『その「決断」がすべてを解決する』(大浦千鶴子:訳/三笠書房)の著者マーク・マンソンは「イントロダクション」で言う。

もう何十年も「ポジティブ思考こそが、成功へのカギだ」と言われてきた。
だけど、その「欺瞞の時代」は終わった。
「人生はクソだらけ」――その現実から目をそらしてはいけない……99パーセントのムダなあがきを手放し、ただシンプルに、1パーセントの本当に「大切なもの」を、どう選択するかにかかっている。「必死に努力をして。成功しないのは甘え」「信念をつらぬけば夢はかなう」「たくさん持ってるヤツが勝ち組」……いまはもう、誰もがその「成功の方程式」は通用しないことを知っている。

 本書は「新しい生き方」をひらく、ロードマップである。

 表紙には、腕組みをしたイカツいヒゲ面の男性の写真(著者)。英語の原題にも放送禁止用語にあたる過激な表現が含まれている。「『外野』は気にするな! 『自分のための選択』を!」と訴える。「ポジティブ思考で、すべてをすんなり受け入れよう」といったような自己啓発書の中では異色である。まさに帯文の通り「ハードボイルド自己啓発書!!」。「アマゾンUS(2017年/ノンフィクション総合)」で売り上げ第1位、200万部を突破した本の邦訳である。

 自分自身で、本当に必要なもののみにして、残りは切り捨てる重要さと、その決断を下すための「5つのロードマップ」が提示されている。ある意味、生き方の「断捨離」と言えるかもしれない。パートごとに、「まとめ」のページがあり、エッセンスがとりいれやすいのも特長。

 マーク・マンソンは、中産階級出身でお金に困ることもなく、「マリファナ漬けのガキンチョ」だったそうだ。高校は中退したが、紆余曲折を経て、ボストン大学を卒業。現在は、200万人以上の読者を擁するブログを運営している。

 本書を書いた理由はいろいろあるだろうが、著者が19歳の時に同い年の親友・ジョシュを事故で亡くした経験が大きく影響しているだろう。ジョシュは「また向こうで会おうぜ!!」との言葉を残し、湖の岸壁から転落死してしまったのだ。著者は、人生のはかなさ・大切さを実感し、「あなたがこの世に残すものは何?」という究極の疑問を投げかけられたようだ。様々な経験ののち、自らの選択で、ほかの退路を断ち、著者は現在「執筆」に専念している。そのことが、生きる道であると選び抜いた結果である。

 前半部分に、アルコール依存症・女たらしで博打好きだったアメリカン・ドリームの体現者、チャールズ・ブコウスキーが長編小説『ポスト・オフィス』(大ヒットした)を「誰にも捧げない」と書いたエピソードが載っている。『その「決断」がすべてを解決する』でいえば、ジョシュはそれに値するのではないかと思われる。

 何かの真髄を味わいつくそうと思ったら、ひたすらそれに専念することが必要。それには自分の価値観をひとつにしぼり、ほかの価値観は拒否しなければならない。ポジティブ思考賛美ですべてを受け入れ「イエス」ということよりも、自らを見つめ、決断してある道には「ノー」を選択することが大事。自分に正直に生きることが、結局は幸福にもつながるのだ。

文=久松有紗子