本を読む時間がなくて…そんな大人のための必ず役立つ“読書術”

文芸・カルチャー

公開日:2018/5/29

『本を遊ぶ 働くほど負ける時代の読書術』(小飼 弾/朝日新聞出版)

「学生時代は暇さえあれば本を読んでいたのに、社会人になってめっきり読まなくなってしまった」とか「読むとしても仕事に役立ちそうなビジネス書だけ」という大人は多いだろう。学生の頃よりも自分の時間が減っている中で、やっと終わった仕事の後に本を読むのは確かに大変かもしれない。それでも、頭の片隅では「本当はもっと読みたいのに」と思っている人もいるはず。そんな大人に手に取ってもらいたいのが本書『本を遊ぶ 働くほど負ける時代の読書術』(小飼 弾/朝日新聞出版)だ。「忙しくて本を読む暇がない」という人向けの解決法から、自分に合った本の選び方、そしてその読み方にいたるまで、年間5000冊読破するという書評ブロガーがあれこれ語り尽くす。

■“噛み応え”のある本は人生を楽にする

「本を読んでいる時間なんてない」という人は、たいていテレビを毎日3時間見ていたり、ネットで意味のない情報を延々と読み続けていたりする…著者は冒頭から、読めない言い訳をする大人たちをバッサリ。なんとも耳の痛い話だが、人がテレビを何時間も見続けられる理由は、「頭を使わないですむから」という彼の意見には納得。試しに“噛み応え”のある難しめの本を読み、脳に知的な負荷をかけてみれば、いかに脳みそを使うための“筋力”が衰えているかがわかるのだとか。

 この“脳みそを使う”という感覚が大切で、難しい本の内容を噛み砕き、自分のものにしていくことは、日々の暮らしの中でも“自分で考える”ことにつながるのだという。自分で考え、自分で決める人生のほうが、言われたことに従うだけの人生よりも数十倍楽なのではないか…というのが、著者の考えだ。

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■ビジネス書に“読まれない”ためには

 著者いわく、本をたくさん読んでいても、“本に読まれる”状態ではダメだという。読書という行為は無条件にいいものと思われがちだが、自分で考えながら読まなければ、むしろ悪影響になってしまうこともあるという。特にビジネス書や健康本は、「本として出版されているから」という理由でなんとなく信用してしまいがちだが、書かれていることを無条件に受け入れてしまうのは要注意だ。

 ここでキーワードになるのは、本の内容を常に疑いながら読む、“批判的読書”という読み方だ。これは、職人の世界における弟子と師匠の関係に似ている。妄信的にひとりの師匠を信じ、言われたことに従うだけではなく、その人を尊敬しながらも、弟子側から「こうしたほうがいいのではないか」と意見をいったほうが、ものごとは進化するだろう。それと同じように、どんなに偉い人、尊敬している人が書いた本であっても、常に客観的な批判精神を持ち、ツッコミを入れながら読む。それによって、より多面的に著者の主張を理解でき、自分の意見が持てるようになるのだ。

 この他にも「本を読めば、自分が読める」「うさんくさい本で批評を練習する」「地味なタイトルに名著が多い」「リア充になりたかったら本を読め」など、見出しだけでも気になる読書ネタがズラリと並んでいる。最近本を読んでいないという人は、まずこの本でリハビリを図ってみてはどうだろうか。

文=中川 凌