巨大な桜の老木の移植に命をかけた男の物語
公開日:2012/3/8
桜が楽しみな季節がまた今年もやってきます。そんな季節を前に今回、私がダウンロードしてみましたのが、プロジェクトXシリーズの一冊、『「桜ロード」~巨木輸送作戦 』です。
桜の木は、「梅切らぬ馬鹿、桜切る馬鹿」とも言われる程、剪定、移殖によるダメージが大きい木だそうです。その桜、それも幹周り約6メートル、高さ約20メートルもある樹齢400年以上の老木を掘り起こし、他の土地に輸送、移殖したというとんでもないプロジェクトのお話です。
戦後の電力不足解消のため、ダム建設の地として選ばれたのは奥飛騨の山中にある荘川村中野地区。米所として知られた豊かなこの地は、ダム建設により、水没してしまうことになったのです。当初反対した住民たちも、戦後復興に不可欠なダムの建設をついに了承します。泣く泣く故郷を離れることになった住民たちが最後に別れを惜しんだのは、「村の守神」と村人たちが崇める桜の大木でした。
村人の誰もが二度と目にすることはできないと思っていたこの桜の木を、見事に移殖し、春には、花を咲かせた人物、それが、丹波政光です。「桜男」と呼ばれる桜研究の第一人者でさえ、この老木の移植は無理だとあきらめていたのに、東海一の植木職人の丹波政光は、同業者の失笑をものともせず、この大プロジェクトに挑むのです。
プロジェクトXはどれも心を動かされるストーリーですが、今回のストーリーは特にウルっときてしまいました。故郷を大切に思う人々の気持ち、そしてそんな人々のために命をかけて、プロジェクトを遂行しようとする職人魂に触れることができるお勧めの1冊です。
第1章のタイトルは、「日本人に愛されつづけてきた桜」。若い頃には理解できなった、日本人の桜への特別な思い。アラフォー女子の私は、今ではとてもよく分かるようになりました
「プロジェクトX」好きにはたまらない、この独特の語り口