ダイエットに成功!と思ったら…「バセドウ病」を発症していた!? ギャグ漫画家による本音の闘病日記

暮らし

公開日:2018/5/30

『あたい、美人病になりました! バセドウ病4年生のぼやきまくり日記』(いさやまもとこ/講談社)

「痩せたい」とぼやき続けて25年。意を決してハードな減量法を試すと、半年後に目標を達成。ところが、減量をやめても体重の減少は止まらない。食事は1日6回なのに、リバウンドどころか痩せていく。「痩せ体質になったから?」と喜んでいたが、気づけば筋肉がやせ細り体力が著しく低下。減量目標の5キロを大きく超えて9キロ以上も体重が減っていた。こうなると、「痩せた!」と喜んでいる場合ではない。

 これは、『あたい、美人病になりました! バセドウ病4年生のぼやきまくり日記』(いさやまもとこ/講談社)の著者であるいさやまもとこ氏が実際に経験したこと。バセドウ病は甲状腺の病気で、甲状腺ホルモンが過剰に生産される。甲状腺ホルモンは、代謝を司る働きを持ち、過剰になると動悸、体重減少、指の震え、汗かきなど様々な症状が現れる。身体症状だけでなく、イライラする、落ち着かないなど、精神症状を呈することもある。(参照:日本内分泌学会)

 著者は、体調の激変を感じながらも痛みなどはなく、病気だと自覚するまでに時間がかかった。動悸、息切れ、めまいなどは更年期でも経験したが、「20倍はキョーレツ」だったそう。少し動けばスタミナ切れになり立ち食いするほど、仕事にも集中できなくなり、さすがにおかしいと思い病院に行くことになった。

advertisement

■バセドウ病は「美人病」?

 バセドウ病は、女性がかかると「美人病」と呼ばれることもあるそう。これは、症状によって身体に変化が起きるためだ。本書によれば、新陳代謝が激しくなるので激ヤセし、肌はしっとりツヤツヤに。まぶたは吊り上がり目が見開いた状態になり(眼瞼後退)、瞳はキラキラと輝く(甲状腺機能亢進症の場合)。著者は「シンデレラの魔法みたいな病気」と明るく語るが、容姿が変わるのはショックだったという。しかし、眼球が突出したりまぶたが腫れたりしているのを気にしていても、周囲の反応はさほどではないこともあり、「自分が気にしているホドには他人は気にしてなんかいない」と開き直った。

■意外と少ない眼球突出

 バセドウ病になると目が出るというイメージを抱く人も多いのでは? しかし、実はバセドウ病患者のうち、眼球突出するのは20~30パーセント程度らしい。そのため、ほとんどの患者は内科の通院だけで済むのだが、目の治療を受ける場合は専門の眼科の受診が必要になる。著者も紹介状をもらって専門の眼科病院を受診するが、そこで告げられた治療は、実に衝撃的なものだった…。

■恐怖のあまり痛みはあまり感じない!? 目の注射

 なんと、目とまぶたに注射を打つというのだ。恐怖におののく著者だが、治療しなければ眼球が動きづらくなると言われ、治療を受けることに。部分麻酔だけなので全て見ている前で行われたのは、眼球を固定し、結膜を切り、注射針を刺すという治療。著者曰く、SF映画『時計じかけのオレンジ』のようだったとか。恐怖で痛みはあまり感じなかったそうだが、想像しただけでも恐ろしい。著者は、これまでに5回、目の奥の注射を経験したが、何度やっても慣れることはなく怖いそうだ。

 バセドウ病を発症して4年目になるいさやま氏。医師から、寛解はあっても治癒はないと告げられ、ショックを受けたこともあった。前向きな姿勢で治療に臨んでいるが、時には不安に支配されてしまうこともあるし、現実逃避することもある。その中で気づいたのは、「自分の身に起きることは、必ずどこかで誰かにも起きている」ということ。「さまざまな病気のさまざまな人たち。辛い治療をしている人たち。病院のベッドで涙をこらえている人たち。病気だけでなくさまざまな困難と向き合っている人たち」を尊敬し、激励する気持ちで書かれたのが本書だ。バセドウ病だけではなく、様々な病気や困難と闘っている方への思いが込められた一冊。

文=松澤友子