“九州バカ”が説く、本当に成功する地元創生とは? オンリーワンの発信力を学ぶ

ビジネス

2018/6/4

『九州バカ 世界とつながる地元創生起業論』(村岡浩司/文屋:編集・発行、サンクチュアリ出版:発売)

「地方創生」という言葉が使われ始めてしばらく経つが、現状はどうだろうか? 補助金を使ったイベントの賑わいは一時的なもので、もう冷めてしまった。中央官庁に収集された“どこかのまちの成功例”を統治的に横展開するというやり方も、すでに破綻しつつある。そんな話をよく耳にする。日本全体として、「地方創生」という響きに新しい希望を感じにくくなってきてはいないだろうか?

 そもそも「地方創生」とは、地方(=東京以外)だけの問題ではない。地方が活気を取り戻すことは、日本全体の経済を再び潤し、理想的な成熟国家になっていく上では欠かせないといわれている。

 一時期盛り上がりの機運を見せた地方創生だが、その間にたくさんの失敗例が生まれたこともまた事実。その原因のひとつは、上述のように「他のまちの成功例を模倣しただけの受動的な地方創生」が蔓延したからではないかと私は睨んでいる。単純に他の成功例(“ゆるキャラ”や“B級グルメ”などがその代表例)の形式を学ぶだけではきっと不十分だ。この壁を破るために、我々はもっとその奥深くにある考え方・向き合い方の部分を学ぶべきではないだろうか。

『九州バカ 世界とつながる地元創生起業論』(村岡浩司/文屋:編集・発行、サンクチュアリ出版:発売)という書籍からは、その大切な根幹の部分が学べる。「地方」という言葉には「首都から見た他の地域」というニュアンスが含まれるため、本書では、主体的に創造するという意味を込めて「地元創生」という言葉が使われている。

「九州ブランドには力がない。九州では商売にならない」と言われながらも、著者の村岡氏が2012年に発売した「九州パンケーキ」は、国内の約3000店舗のスーパーマーケットや小売店に加えて、アメリカでも13店舗の日系スーパーで売られている。また同ブランドを冠した「九州パンケーキカフェ」は、著者の地元の宮崎市をはじめ、台湾やシンガポールにも出店している(2017年12月現在)。その成功を支えた、著者の実業家としての考え方を見ていきたい。

■地元にあふれている「当たり前」を可視化すると――

●地元で見過ごされている「当たり前」こそが、外から見れば「ブランド」に成長し得る潜在的な価値。
●「当たり前」の中に潜む本質的な豊かさを可視化し発信する。そこからブランドの価値が成熟していく。

(40ページ)

 身近にありすぎて見過ごしがちな「当たり前」には、地元ブランドをシンボライズできるほど際立った特徴が隠れている。当たり前で見逃してしまいがちだからこそ見つめ直したい、と著者は語る。

 地域ブランドを考えるときに、著者がライバルとして参考にするのが「北海道」の存在だという。「北海道ソフトクリーム」「北海道生キャラメル」「北海道チーズケーキ」などはすべて、地元では「当たり前」な酪農の魅力を可視化し、商品の価値に転化した好例だ。

 本書は第1章の「地元創生起業のすすめ」でそのコンセプトが著者の視点で語られ、その後は著者の失敗談から転機、事業拡大の流れにいたるまで、その取り組みと九州パンケーキの歴史が語られる。そのストーリーを追っていくと、随所に地元創生に必要なヒントがちりばめられていることに気づくだろう。

 本書で語られる内容は、単純な「パンケーキの作り方と売り方(もしくはその模倣の仕方)」ではない。ひとつの実現例として「九州パンケーキ」が地元ブランドとして成功するまでの過程や、周りの巻き込み方、心構えと、「地元創生」の根幹をなす重要な方法論が本書から学べる。これらはどれも地元創生に勤しむ人のみならず、全てのビジネスパーソンにとっても有益な情報であると感じた。

文=K(稲)