いちげんさんお断り。京都の「見えない壁」の正体を解き明かせ!

社会

2018/6/5

『京都の壁』(養老孟司/PHP研究所)

 京都、不思議な都市である。観光都市として国内外問わず人気である一方、よそ者を寄せつけない独特の雰囲気。開放的でありながら閉鎖的、観光客を歓迎しつつも自分たちの習慣は頑なに守り続ける。このような京都には「よそ者を受け入れない見えない壁」があるのだろうか? そしてこのような壁の存在こそが、実は京都のステータスを上げているのではないだろうか?

 本書『京都の壁』(養老孟司/PHP研究所)は、京都という絶大な人気を誇る都市を「そこに見えない壁はあるのか?」という独特な観点からひもとこうと試みたものである。

■本来都市とは「壁」で囲まれたもの

 あなたは気付いていただろうか? 都であったにもかかわらず京都には街全体を壁で囲むような「城郭が存在しない」ということに。

 これは世界的に見てもとても珍しい都市の形態で、こういう文化はあまり例がない、と著者は言う。インドや中国、台湾など他のアジア地域でも都市は必ず壁で囲まれていた。そしてヨーロッパでは今でも城郭が残っている都市がたくさんある。このように「ここから先は別の世界」ということを示すために本来都市は城郭で囲われ続け、またそれが平和を保つ役割も果たしてきたのだ。

 では城郭を造らなかった京都はどうなったのか? 代わりにできたもの、それが「よそ者は入れない」と考える「心の壁」ではないか、と著者は説く。城郭はないけれども代わりに心理的な壁をつくり街や自分たちを守ってきた、というわけだ。

 この「心の壁」は歴史・文化のある街になればなるほど強くなるのであろう。したがって京都では特に「よそ者を受け入れない見えない壁」を強く感じ、それがかえって京都というブランドを作り上げているのではないか、というのが本書における著者の考えである。

■もうひとつの壁、共同体=コミュニティの存在

 もうひとつ京都を語る上で決して避けては通れないキーワードがある。それが「共同体」だ。

 京都には、昔ながらの地域の共同体=コミュニティが現在でも色濃く残っている。つまり、自治的に組織をつくり物事を決める市民文化が未だに存在しているのだ。その典型として日本三大祭りのひとつ、祇園祭が挙げられている。何百年も前から続いてきた伝統行事を決して途切れさせず続け守っていく。これは地元の人たちの力なくしては成り立たないシステムだ。昔ながらの「共同体=コミュニティ」のつながりが今なお根強く生きているのが、京都という都市なのだ。

 この共同体=コミュニティの存在こそが京都の魅力を高めている反面、よそ者から見るとなかなか入り込めない京都の「壁」に見えるのかもしれない。

 本書では「壁」をキーワードとしながら京都に対する著者の素直な想いがさまざまな観点からつづられている。思わずくすっと笑ってしまうような話も随所に仕込まれているため、ついつい話に引き込まれ読み進めてしまっている自分に気づくかもしれない。

 人気都市であるが故、巷に「京都」に関する情報は溢れている。だからこそ人とは違う角度から京都を見てみたいと思っている人には、ぜひ本書を手に取っていただきたいと思う。

文=ナカタク