「なんだか仕事がつまらない…」その中だるみ、ただのスランプじゃないかも

ビジネス

2018/6/6

『「中だるみ社員」の罠』(山本 寛/日本経済新聞出版社)

 春の新入社員も、ようやく会社の雰囲気になじんできた時期だろうか。会社の中堅社員ともなれば、そんな初々しい存在が懐かしくもあり、微笑ましくもあるのだが、ふと、最近の自分の状況を振り返ってみる。「仕事への意欲はあるか? それとも惰性なのか? ひょっとしてルーティンをこなしているだけ? これでいいのか?」と自分自身について次々と疑問を巡らすことはないだろうか。

『「中だるみ社員」の罠』(山本 寛/日本経済新聞出版社)の著者は、銀行、市役所での勤務、大学院を経て、経営学博士として長年、働く人のキャリア形成について考察してきた研究者である。本書は“キャリアが停滞している人”をテーマに、さまざまな職種で起こる具体例を示しながら、その原因を探り解決法を提案する。

■キャリア停滞には、4種類のタイプがある

 具体的に“キャリアの停滞”とはどんな状態を指すのだろうか。「スランプ」という言葉が同義語として浮かぶかもしれない。だが、著者は「近い言葉ではあるが、意味は違う」という。本書では“停滞”という言葉を「プラトー(直訳だと“高原状態”)」とも言い表す。高原は登ってしまうと、平坦な台地が続くということが転じて“停滞”と訳されるようになったそうだ。

 それでは、「スランプ」と「プラトー」で何が違うのか。例えば、ある程度の仕事のレベルがあるとしよう。スランプとは、レベルが低下する「一時的な状態」のことを指す。一方「プラトー」とは、レベルが伸び悩み、上昇もない、いわゆる「横ばいの状態」が続くことを指し、厄介なことに「長期化」する傾向があるという。このように、一定レベルに達した後に辿る曲線が異なっているのだ。

 上記を踏まえたうえで“キャリアの停滞”には4種類あると著者は説く。「(1)仕事の停滞」「(2)昇進の停滞」「(3)配置転換の停滞」「(4)人生の停滞」である。停滞のタイプごとに、会社員や公務員へのインタビューを織りまぜながら構成、解説がされている。さまざまな事例から停滞の実態を知ることができ、読みながら同意したり、近い将来を想像してみたりと、自分の働き方や人生に置き換えて考えさせられる内容だ。中には2つの停滞が重なって「ダブル・プラトー」状態になってしまうこともあるそうだが、できることなら回避したいものだ。

■“キャリア停滞”の状況をチェックしてみよう

 では、停滞の“サイン”にはどんなものがあるのか。本書に掲載されているチェック項目をいくつか取り上げておこう。

□大河ドラマの時間帯に憂鬱な気分になることがある
□最近、自分のキャパを超えた仕事をしていると思う
□仕事にワクワクしない、でも転職も決断できない

 あなたの状況は、どうだろうか。 キャリアを築いていくには、メンタルヘルスを良好に保つことも大切だということがわかる。

 停滞にどう立ち向かっていけばいいのかという打開策は、本書第5章「マンネリ感を自ら打破するために」以降に詳しい。同章に心構えとなる言葉がある。

そもそも、一人の人のキャリアのことがすべてわかるのはその人だけです。(中略)つまり、自分のキャリアのことは、基本的に自分で考え、何か問題が発生したら、または起こりそうだったら、自分で対処していかなければなりません。いいかえると、自分のキャリアについての最終的な責任は自分でとるしかないのです。

 そして具体的には「レジリエンス」という“折れない心”や“回復力”を意味する言葉を活用した「キャリア・レジリエンスを鍛える」こと、「自分のキャリアを戦略的に考えてみる」など、個人が対応できる「停滞解消」の方策を伝授する。さらに組織や上司に向けた“キャリアの停滞に陥っている人”へのマネジメントについてもさまざまな提唱がなされている。

 ここ数年、働き方改革による残業見直し、副業解禁や高度プロフェッショナル制度についての是非など、労働環境は目まぐるしい変化の真っただ中にある。また、AI(人工知能)や機械の導入により“10年後になくなってしまう仕事”が話題となり、働き方そのものの行方を誰もが注視している。本書は、自らのキャリアデザインの再考を促す大事な1冊となり得るのではないだろうか。

文=小林みさえ