「韓国人は日本が大嫌い」は本当か? 韓国とのビジネスで成功するためには?

社会

公開日:2018/6/7

『韓国ビジネス 53の成功ルール: 互いの違いを強みに変える最強タッグの作り方』(徐 丞範/合同フォレスト)

 4月27日の韓国と北朝鮮との南北首脳会談が終わり、6月12日には初めての米朝首脳会談がシンガポールで開催されることになっている。この先どうなるかは未知数なものの、朝鮮半島の融和が進むことで、新たなビジネスチャンスが生まれるかもしれない。

 それに先立ち、まずは韓国人とのビジネスを円滑に進めるには何について知っておけばいいのか。『韓国ビジネス 53の成功ルール: 互いの違いを強みに変える最強タッグの作り方』(徐 丞範/合同フォレスト)は、物理的距離は近いながらも心の距離は近いとは言えない日本人と韓国人が、ビジネスを進める上でどう接していけばいいかを紹介している。

 著者の徐丞範(ソウ・スンボム)さんはソウル生まれ。父親が韓国大使館に勤務していたことから、小学校5年から高校2年まで東京都港区で過ごしている。韓国に帰国後は朝日新聞ソウル支局や広告代理店などに勤め、1993年の大田エキスポや2002年の日韓サッカーW杯で、プロモーション事業などを手掛けてきた。いわば日本のことを良く理解している、「知日派」の1人と言えるだろう。

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 徐さんいわく、2000年代に入ってから目に付くようになった「嫌韓ブーム」が本格化したのは、2012年に李明博大統領(当時)が日韓が互いに領有権を主張している「竹島」を訪問し、さらに天皇陛下に謝罪要求を述べたことがきっかけだった。それ以降は日本と韓国のマスコミが互いに刺激しあい、「嫌韓」「反日」を煽っているマッチポンプ現象が続き、それが現在の冷え込んだ関係のもととなったと見ている。しかし、

「嫌韓」を訴える人たちは、「韓国人は全員、強い反日感情を持っている」と主張します。それは、韓国の実情からは、かなりずれていると言わざるを得ません。

とも言う。

 一般的な韓国人はもはや「反日」記事には食傷気味で、日本で報道されているほど、「反日」記事がマスコミを騒がせることはない。ではなぜ、「韓国人は日本が大嫌い」だと広く思われてしまっているのか。その大きな理由は、子どもの頃から植民地支配時代のことを学んできた韓国人と、ほんの数行の教科書記述でさらりと流してしまう日本人では、そもそもの出発点が違うことにある。そして、

見た目は同じアジア人でも、日本人と韓国人はそもそも大きく異なる。なのにお互いの違いを理解しようとすることなく、自分たちの常識で相手を判断してしまう

から、互いに誤解が生まれてしまうのだと分析する。

 日本人と韓国人はそもそも外国人同士。なのに「いつか分かり合えるだろう」と考え、相手が歩み寄ってくれることをそれぞれが期待するから、平行線をたどってしまっている。だから徐さんは、

「わかりあえる」という期待を、いったんあきらめてみるといいのではないか。

 と主張する。しかしそれは良い関係を築こうとすることをやめるとか、ましてや断交することでは決してない。大事なのはわかりあえないもの同士が「わかり合える」という希望を捨てることが重要なのだ。

 確かにお互いを外国人として見ることで、「違って当然」と寛容になれるかもしれない。「なんでこんなことをするのか」「どうしてこんなことを言うのか」と、腹を立てたり悪しざまに罵って否定したりせず、相手を見ることができるようになるかもしれない。

 日本人同士であっても相手と親しくなると、つい「同じ考えを持っている」「互いに共感しあえる」と思い込んでしまいがちだ。しかし他人は全員、自分と同じ人間ではない。ましてや言葉も生活習慣も違う日本と韓国は「違う」のが当たり前で、どちらの国の人間であれ「なぜ私のやり方を認めてくれないのか」と思うのは、傲慢さの表れと言えるだろう。

 同書では一冊を通して、日韓のちょっとした習慣を軸にその違いを紹介しながら相手を知ろうとすることの大事さや、無知でいることがもたらす悪影響について説明している。

 ちなみに無知について徐さんは、批判の対象を韓国人にも向ける。2017年にトランプ大統領が韓国を訪れた際、韓国政府は「独島エビ」と命名した、日本海やベーリング海域でとれるエビを晩餐会メニューにした。日本の抗議に対し韓国の外交担当者が「知識のない儀典担当者が、面白半分でメニューに加えた。事前に相談されたら反対した」と答えたことをあげ、この無知や理解の足りなさが関係悪化の火種を作ってしまうことになると指摘している。

「○○人だから」ではなく、何人であっても無知や無理解なまま自分流を押し通そうとすることは、コミュニケーションの一番の障害になるのだ。成長過程で日韓それぞれの文化や生活を味わい、今も互いを行き来しているビジネスマンだからこそ書けた本だと言えるだろう。

文=朴 順梨